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ファッキン虫野郎のためにダスキンを召喚した

 生活に支障をきたすほどに例のファッキン虫野郎が嫌いだ。
 初っ端から物凄く口がわるい人みたいになってしまったけれど、ここで言う「虫野郎」は何かの比喩ではないしインセクター羽蛾のことでもない。そのまま、あの虫のことです。私が口汚く罵る虫といえばあれしかいないでしょう? しかもこの季節(じめじめとして暑い)に。蝉かな? と思う方もいるかもしれないので情報をひとつ追加。「黒い」。以上です。これ以上あれを表現するために私の語彙をひとつだって消費できない。
 ファッキン虫野郎と会わないため、そのためだけに私は心血を注いできました。あの虫野郎はどこにでもいますが、しかし流石に「無」からは生じません。室内に存在しないのであれば、外から侵入させなければ少なくとも室内では会わなくて済みます。(追記:このあとの調査により「どれだけ頑張っても入ってくるときは入ってくる」と知りました)

 以前「外で見るのは別に平気なのに、室内で見るのはイヤ」と言っている方がいて驚愕しました。外で見るのだって超嫌だ。あなたは血に濡れた包丁を持った男を屋外で見かけたときに「室内で見なくてよかった」と思うのか? 恐怖の種類が変わるだけでどちらにせよ最悪である。
「逃げ場がない」という意味で確かに室内で見る方がより地獄寄りの最悪であることに変わりはなく、だからこそ私は最善を尽くしてきました。
 食べ残しを放置しない。ゴミ箱は蓋付きのものを防虫剤を添えて。生ゴミは凍らせる。こまめな掃除。定期的な祈祷。
 それなのに、それなのに先日の夜、静まり返った部屋の隅で「カサカサ」と音がしました。
 だから私はダスキンを呼びました。プロの害虫駆除業者を。
 音がしただけです。姿を見たわけではありません。まぎれもなくヤツだという確信があるわけでもない。
 けれと可能性が生じた時点で駄目なんです。
 その可能性は私の生活に影を落とし、冗談ではなく精神を疲弊させます。
 深夜にかさかさ音を立てるなんて妖精かヤツかの二択であって、仮に妖精だとしたら妖精駆除業者を呼びますが、より可能性が高いと見たヤツに対する専門家を呼び寄せました。金で。資本主義社会は素晴らしいですね、金さえあればなんでもできる。そう、ヤツを倒すためのプロを呼ぶことだってね。
 部屋の隅でそれらしき物音がしただけで駆除業者を呼ぶ私を笑いますか。あなたが笑わないとしてもかつて私を笑った者はいました。思い返すこと4年前、室内で初めてヤツを見て狂乱した私はダスキンを呼びました。そう、私が彼らに頼るのはこれで4年ぶり2回目なのです。オリンピックか? 中止してくれ。
 その時私を笑ったのはダスキンの人ではなく、私の同僚たちでした。職場で必死に恐怖を訴えた私を彼らは笑ったのです。害虫駆除業者を呼んだことを面白エピソードとして消費しようとした(そうすることで精神のバランスを取ろうとした)私もまあ悪いのですが、その私を、本気で怯える私を笑った彼らだって悪い。その生に呪いあれ。人が恐れるものを、それがどんなにくだらなく思えても決して馬鹿にしてはならないと、本当に思います。(私も笑う側になってしまったことはあるはずで、なのでこれは自戒です)

 これを読んでいる人の中には、例の虫を憎み、怯え、ダスキン召還を検討している方もいるのでしょうか。先駆者としてアドバイスするなら、迷うなら呼んだ方がいいと思います。プロの対応になるため効果は期待できますし、それに何より気が休まります。「私はベストを尽くした」、その気持ちが人の心を安定させる。
「ダスキンの人って怖くないかな」とお思いかもしれませんが、少なくとも私が相対した担当者の方は皆さん非常に人当たりがよかったです。
 もちろん私がお会いした方は全体から見るとごく一部であり、他のダスキンの方が全員極悪人(例:履歴書の趣味特技欄に「エルフの森を焼くこと」と書いている)の可能性もゼロではありません。しかしながら顧客と直接やり取りをする仕事のため、おそらく極悪人は自然淘汰されているものを思われます。
 単に駆除するだけではなく、例の虫への対処法など、有用なtipsを伝授もしてくれます。
 めちゃくちゃステマのようになってしまいましたが、一銭もいただいていません。むしろ私は料金を支払った側です。
 なおダスキンさんの料金’(1回あたり)は最低価格が1万円らしく、私はなんやかんやでダスキンさんにちょっと言いづらいくらいの金額を吸い取られていますが、もういい。ぜんぜんいい。投資なので。払います。

「結局どう立ち向かうべきなのか」について聞いたこともまとめて書きたいのですが、この時点で私の精神的体力が限界なのでいったん筆を置こうと思います。例の虫について考え続けることができるのは一度に3分が限界なんです。

 最後に「ダスキンの駆除業者あるある」と言って終わりたいと思います。

「別に例の虫が好きなわけではないし、どっちかというとイヤ」

 以上です。ご清聴ありがとうございました。


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