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透明の音

好きと嫌いが混在するこの世の中に、ひとつ暗い影を落としている。
難しいものはここにはなくて、ただ無の世界が広がっているだけなんじゃないかと、思ったりする。
重力のある世界は、僕には重すぎるようだな。
コップに注がれた水を飲み干して、息を吐いた。
僕は今どこにいるのだろう。
悲しい事実だ、知りたくなかった、そう呟くその口は僕のものでないみたいだ。
好きだから優しい、嫌いだから優しくない。
裏のない優しさは不安だと言った誰かの顔が思い出せない。
誰かを、本気で愛せるようになりたいな。
今は違うけれど、いつか。いつかは。
飲んだ水が、体に溶け込んでいく感じがした。

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