なんちゃって学際研究?分子進化論料理

 親子丼という料理がある。皆さんもよく知っているだろう。
 鶏肉と卵だから親子というわけである。実に分かりやすく、そして旨い。
 では、次は別の料理を紹介しよう。
 たらこマヨネーズだ。もしかするとこれは料理といえない代物かもしれない。
 作り方は簡単だ。適量のたらこに適量のマヨネーズを混ぜるだけだ。
 おにぎりの具やパスタなどによく用いられる印象だ。これも旨い。

 ここで一つ考えを巡らせてみよう。
 親子丼というとき、その鶏肉と卵は同じ遺伝子から合成された物質からなっていると考えることができるだろう。
 では、たらこマヨネーズはどうだろう?分かりやすいようにマヨネーズは原料ベースで考えるとする。
 マヨネーズの原料は卵、酢、塩。たらこはタラの卵だ。
 二つの共通点はせいぜい卵を使っている、ということぐらいだろうか?一見すると共通点は無いように思われる。
 では、なぜ、組み合わせると旨いのだろうか?

 この謎を分子進化論が解明してくれるかもしれない。
 そういう突飛なひらめきが私を襲ったのが、11月2日の昼だった。
 いくつかの異なる食材の組み合わせの旨さの要因として、食材を構成するタンパク質をはじめとする分子の類似性(アミノ酸の配列等)が料理の味に影響を与え、味覚に与える刺激を強化する、ということがあるのではないだろうか?

 再び親子丼を例に出すと、鶏肉と卵であれば基本的に持っている遺伝情報は同じと考えられ、発生段階の違いこそあれどタンパク質のアミノ酸の含有比率は近いものになると考えられる。
 特定のアミノ酸が多く存在することによって、味覚がアミノ酸から受ける刺激は強化されることが考えられるだろう。それによって鶏がもつ味が強化され食べたときに旨いと感じる。
 同様のことが、たらこマヨネーズでも起こっており、鶏卵と魚卵の共通するアミノ酸が、組み合わせられることにより、味覚刺激を強化し、単一食材毎では生まれない味を生み出しているのではないだろうか?

仮にこの現象が実際に存在し、料理の味を左右する要因の一つとして位置付けられるのであれば、分子進化論的に一定程度の類似性を持つ食材の組み合わせで、特定の味を強化する法則を見出し、料理や味覚をより科学的に定義することが可能かもしれない。
あるいは、今まで不味くて食べられないとされていた食材を組み合わせによって美味しくするということも可能かもしれない。その場合、食料問題の解決の一助になる可能性も生まれることだろう。

私が思いついたのはこんなところである。

現在、多くの生物のゲノム解析が終了し、そのデータが蓄積されているという。
たかが料理ごときにその情報を使うなんて、と思う人も多いだろう。
私もそう思う。たかが料理ごときに。
しかし、料理、食物は人間の生存を支える上で絶対に欠くことできないものであり、心理的、物理的欲求の両側面を満たしうる素晴らしいものだ。美味しいものを食べることこそが至上の喜びであるという人も大勢いる。
その料理を追求するのなら、どんな手段、情報を使っても構わないという情熱を持った人はいるだろう。
その人が、いつか料理を科学的に解明して、その味を左右する要因にこの考えがあったら、それを見つけた私は、それはそれは楽しい気分で食事できるだろうな、と思うのである。
おわり。

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