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弱い人

ちょっと暗い話になります。


もう7年も前のことになりますが、社内でパワハラを受けていたことがあります。
自分にとってはトラウマの時期で、今となっては、あまり細かいことは憶えていないですし、思いだしたくもないのですが。

まあ、やられたことを一つずつ並べると大したことではないです。
「社内でへんなあだ名をつけられる」とか「人前で思い切りバカにされる」とか「SNSでしきりにクソリプを飛ばしてくる」くらいでした。
基本方針は、こちらを軽んじること。それも事あるごとに。徹底的に。

その人は私より10くらい上の先輩で、社内グループのリーダー的な役回りだったので、彼が軽く見るとその認識がグループ全体に行きわたりました。
それこそ自分よりずいぶん年下の後輩にまで。ほとんど知らない上役の送別会の仕切りとか、仕事と関係ない雑用を積極的に投げられたりしました。

当時の自分は、そのグループ内で自分の立場を失うのがこわくて、メンバーのために一生懸命尽くしていました。
ただ不思議なことに、尽くせば尽くすほど彼らの中での自分の立場はますます軽くなっていくのです。

このあたり、今となってはよく分かりますが、自分を軽く見てくる相手に必死になって尽くすと、余計に軽く見られるんですね。
youtubeの動画でそのあたりの心理を詳しく解説してくれるものがあり、なるほどと膝を打ったことがあります。


投げかけられた言葉の中で、今でも印象に残っているのは以下のようなものです。

  1. お前が本当はそんなこと考えてないのは、みんな知ってるから。
    当時は社内の人にも見える形で、本名でSNSをやっていましたので、その書き込みの内容に対する反応です。
    どうもその人の持つこちらへの印象と、SNSの書き込み内容にギャップがあり、「本心ではそんなこと考えていないに違いない」「ウソはよくない」と決めつけての発言だったようです。
    確かに当時、少々背伸びをしながら発言していた部分もあると思いますが、自分の中でひねり出した自分の言葉です。丸ごと偽りと決めつけて否定するのはずいぶんと失礼な話です。
    彼の中で私は「どうしようもない馬鹿」と決めつけられていて、そのイメージから外れた行動=ウソと認識していたようです。
    個人でそうした認識を持つのはどうぞご勝手にと思いますが、周囲の人にふりまいたり押しつけたりするので性質の悪い話です。

  2. お前、俺を怒らせたらどうなるか分かってるんだろうな。俺は徹底的にやるからな。
    SNSで飛ばされる先輩のクソリプに耐えかねて反論したり、最終的にブロックしたとき、先輩に呼び出され言われた言葉です。
    「ぶっ〇す」とも言われましたね。今考えると完全にパワハラなので、録音しておけばよかったと、のちのち後悔しました。
    脅迫とも言えるので、警察に相談もできたかもしれません。
    まさかSNSでブロックされた程度で脅迫行為を働くなんて、馬鹿馬鹿しくてまともにとりあってもらえなかったでしょうが。


結局のところ彼らの横暴は、耐えかねた自分が社内で公にしたことで、ある程度収束することになります。

暴言を吐いた先輩社員は、ヒラ社員に降格の上異動となりました。
ところが異動先でも懲りずにパワハラをやらかし、今度は相手から訴訟される憂き目となりました。
最終的には精神的に病み、体調不良で退職。さんざん他人を踏みつけにしておいて、ずいぶんとお調子のいい話です。

今ごろどこで何をしているか。
別に不幸になってほしいとは思いませんし、幸せを祈るのもやぶさかではないです。自分と関係のないところで生きるのであれば。


当時の自分は「弱い人」でした。平たく言えば自信がなく、ひとりきりでいられる強さがなかった。
だから、自分を徹底的に軽んじる場で、なお周りの人に尽くす選択をしてしまった。やればやるほど軽んじられ、やればやるほど自己肯定感が低下する、最悪の選択です。

その後の数年間で痛いほど実感することになりますが、自己肯定感が一定水準以下まで低下すると、回復するのは容易ではなくなるんですね。
「自分は駄目なやつだ」というのが、常に思考の始点になってしまう。回復するのに必要な自己肯定感すらない、空っぽの状態になる。

幸いにして、当時の自分には、それまで培ったスキルと、それを求められる仕事がありました。

必死になって仕事をこなしているうちに。それからシナリオを書きはじめて、素晴らしい仲間と出会えたり。家族、特に母の支えがあったり。
いくつかの幸運と年月を重ねるうちに、いつしか穴は埋まり、今の自分は、なんとか「弱い人」を抜け出せた気がします。
でもそれは本当に幸運あってのことです。仕事で期待されず、仲間と出会えず、家族の支えがなければ、ほんとうにどうなっていたか分かりません。

そうして、自己肯定感を回復できずに潰れてしまった人が、今の世の中にはたくさんいると思います。

アドバイスできるほど知見があるわけではないですが、自分の経験からいえば、なにを言ってもバカにされる、徹底的に軽んじられる場であれば、そっと距離を置くのが最適だと思います。
大事なのは、その「場」以外に自分の居場所をつくること。趣味を見つけ、その趣味をもとに社会人サークルに入ってみるのもいいでしょうし、SNSなどを居場所にしてみてもいいでしょう。
ひとりきりになるのは怖いですが、なっても案外なんとかなるものです。

それでもうまくいかなければ、カウンセラーや心療内科にご相談を。決して恥ではありません。


そんな感じで自分は「弱い人」だったと自覚しましたが、パワハラ先輩はどうだったか。

彼は周囲にいる自分より弱い人を「必要」としていた。それはなぜか。
自分より弱い人を踏みつけにしなければ、自尊心を保てなかったのだと今では思います。
思えば、自らで自らを支えることができず、生きるために生贄を必要とする彼こそが、最も「弱い人」だったのでしょう。


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