ツボナージュが生まれた 1

今回はツボナージュ誕生のキッカケをお話したいと思います。
40年近く前、まだ世間が昭和の常識の中、当時の師弟関係に馴染めなかった私は、ある鍼灸治療院を志し半ばで辞めることになりました。

でも「身体に不調がある人を治せる人になりたい」という、当時の私の中にあった漠然とした希望を諦めることができず、
いわゆる師弟関係がほとんどなかった指圧の世界に飛び込みました。
そして短い研修を受けたあと、少しづつ患者様の治療に入らせていただくようになった私は、ものすごく下手くそでした。(笑)

そうです、ド新人の割には、母が指圧のプロだったことと、鍼灸の勉強をしていたことで、自分が、いかに下手くそかは良くわかったのです。
その時に強く感じたことがあります。 
それは「この治療、強い力を持っている人が、優しい力で治療すると、もっと大きな効果が得られるのではないか?」でした。

そこで当時は、華奢だった自分の指を、とにかく強揉み好きな男性の患者様で徹底的に鍛え(これは後に無駄だとわかりました)起き上がる腹筋運動で腹筋の上部を鍛え、足の上げ下げをする腹筋運動で下腹部を鍛え、さらに背筋運動、ストレッチなどで強い力をつける努力をしました。

すると、いつの間にかお相撲の蹲居の姿勢をラクにできるようになっていました。
その頃から、強揉み好きの患者様にもムキになって力を使わなくても満足していただけるようになってきました。
先輩からも「あなたは痩せているのに、本当にラクそうに治療しているわね、骨が太いのかしら」と言われるほどに。

自分でも、私、ほとんど力を使わなくなったなぁー? でも? 何か違う種類の力は使っているんだよね、確かに、と感じていました。

これは「体幹からの力」だったんですね。
だから強い力を使っていないのに身体の奥まで届いて、強揉み好きの患者様も満足させられたんです。

この「体幹からの力」を手に入れた私は、ある先輩が頚の前側を治療しているのを見て、ぜひ自分もやってみようと思いました。
理由は、私自身が酷い頚凝り性で悩んでいて、いろいろな治療院に通っても解決していなかったからです。
そうは言っても頚の前側は身体の中でも 1番デリケートなところ。
最初はそっと、本当にそっ〜と触ってみました。
すると! 胸鎖乳突筋(左右の耳の後ろから鎖骨に向かってななめに伸びている筋肉)の内側に硬い、骨よりも硬い棒状の塊を発見しました。
最初はこんな硬いものをほぐせる気がまったくしませんでしたが、とにかく新しく手に入れた体幹からの力で、そっと触ってみました。
すると患者様は痛がられましたが、少し塊が溶けた気がしたのです。
でも、これ以上は無理できないな、そう思っていた時に、高血圧で悩んでいる方に出会いました。
いつものように頚の前側を触ると「そこ効く気がする」とおっしゃっいます。
そこで思い切って他の部分と同じように、しっかり治療したら、
なんと骨より硬い棒状の塊がドンドン溶けていきました。

しかし、1週間後の治療では、同じような塊があります。
また、ほぐすのですが、その翌週も、また同じような塊があるのです。

ところが毎週、治療していると患者様は揉まれる痛みが減ってきたとおっしゃっいます。

その言葉を頭に入れて細心の注意を払って、前頚の塊を触った瞬間感じたこと! わかったこと!がありました。
この凝りは単に胸鎖乳突筋の内側にだけ存在するのではなく、その奥の胸椎の裏側まで、ずっと続いている奥深い凝りなのだと。
ほぐしても、ほぐしても翌週同じように凝っているように感じたのは、奥に入っていた凝りが胸鎖乳突筋の内側まで浮いてきていたのだと。
そして全体の量が減ってきた結果、患者様の治療される痛みが減ってきているんだと実感しました。

半年ほどで、その患者様の血圧は安定してきてお医者様に相談して、少しづつ薬も減らすことになりました。
私がツボナージュを発見した最初の症例です。
この方をキッカケに他の患者様も、しっかり前頚の凝りを治療するようになりました。

すると不眠症や目の疲れ、頭痛、顎関節やこめかみなの強張りなど、いかにも頚の治療に関係する症状だけではなく、胃腸の不調や二日酔いにまで効くことがわかってきました。

後年、当時は凝るとあまり知られていなかった歯茎や耳の奥、喉そのものの凝りも改善することができました。


次回は第2弾を書きたいと思います。

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