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脱初心者に向けて「初心者っぽい曲」と思われるポイントについてのエトセトラ【DTM初心者向け】


僕は大したことない程度の歴をもつDTMerだ。
初心者マークが外れたかなぁくらい。

そんな僕だが、初心者マークが取れたことで「ある能力」が身についた。
曲を聴いた時に作曲者が初心者かどうかを聴き分ける力である。多分中級者以降の人はみんな持ってる。何故なら経験してるから。

そこで今回はこの能力を使って「初心者さんだ」と思われる要素を書き連ねる。

逆説的に、ここに書いてあることをしなければ少なくとも僕は初心者だと思わないということである。

では書いていこう。


①歌のメロディを明らかに鍵盤だけで作ってる


まずはこれ。滅茶苦茶多い。滅茶苦茶多い上に、コレが一生治らない人も知り合いに居る。
まずもって、初心者マーク付きの人の8割がこれ。

これは右手1本で行ける範囲を登ったり降りたりしてるだけのメロディのことを指している。
聞くだけで「ああ、初心者さんだ」と分かる。

これは楽器経験の有無は一切関係ない。なんならピアノやってる人の方が陥り易いと思う。

僕が右手鍵盤メロディだと判別している方法は以下。
・同じ音が連続しない
・登るメロディと降るメロディのランダムな組み合わせ、メロとメロの間にとりあえず置いたみたいな繋ぎの音がある
・リズムが常に一定(8分音符が並ぶだけ等)
・鼻歌でメロディをなぞると妙に覚えにくく難しい

だいたいこの4つ。
特に1番上の「同じ音が連続しない」は本当によくある。

対策はとっても簡単だ。鍵盤でメロディを作らないこと。鼻歌とかが一番早くスムーズなメロディが作れる。

鍵盤が無いとメロディが出来ないんじゃい!って人は歌詞から作ってみよう。日本語の持つイントネーションやアクセント、間の感覚が自然なメロディを作ってくれる。ボイスレコーダーに録音して、それを聞きながら鍵盤で打ち込めば解決だ。


②ピアノが一生ジャーンってやってる


これも結構多い。初心者の中でもとびきりの初心者がやりがち。
要はピアノが全音符でドーンと弾かれてる状態だ。

それがコンセプトの曲ならそれで良いが、そうでないなら避けるべきだ。
勘違いされがちなのだが、ピアノはディケイする楽器、つまりほぼリズム楽器なのだ。
ヴァイオリンみたいな弦楽器や無限に音が伸び続けるシンセとは音の質で大きく異なる。

なので「ピアノをジャーンとした時の空気感が欲しい!」って時以外はやめよう。せめて刻もう。

でもジャーンとコードが鳴ってないと不安って人は、せめて同じディケイ系の楽器でもエレピにしよう。その他では普通に弦楽器やシンセに担当させればいい。


③教則本の1ページ目みたいなドラム


これも多い。ドンタンドドタンを無限にやってるやつ。

勘違いしないで欲しいのだが、コンセプト無く一定のパターンのありふれたリズムがずっと続くのが悪いのであって、コンセプトがあるなら良い。
僕も同じようなリズムが続く曲は好きだし、よく作る。


上の曲は「ドンタンドンタン」のパターンしかないし、ドラムの打ち込みに5分もかかってない。けれど明確なコンセプトを持って臨んでいるから聞いてて違和感は無いはずだ。多分。

この項目に初心者さんが陥る原因は「ドラムの重要性を理解していない」ことに起因している。

楽曲の中で最も重要なパートは何だろうか。
恐らくボーカルや派手なリード、ギターやピアノだと思ってないだろうか。

答えはドラムなのだ。本当だ。
2つも理由がある。

1つ目の理由はドラムは単体で最も大きな音の楽器だからだ。リスナーはそんなこと思ってないだろうが、普通にミックスすれば大体キックが一番音量のある楽器になる。

「いや、ボーカルの方がデカいだろ」と思う人も居るだろうが、そんなことは無い。視聴環境によっては聴感上そう感じるかもしれないが、ちゃんとメーターで見ればドラムの方が圧倒的に大きい。

もう1つの理由は、ドラムがリズムを支配している事だ。音楽は主にメロディ、ハーモニー、リズムの三要素で構成されるが、このリズムの項目の大部分をドラムが担当する。
リズムの項目は他の二要素に比べて弱くね?みたいに考える方もいらっしゃるだろうが断じてそんなことは無い

音楽のジャンルの大部分はリズムによって決定されるのだ。その音楽の雰囲気や属するジャンルを決定付けるリズムさんが弱いわけが無い。即ちドラムさんは偉いという事なのだ。


さて、この教則本の1ページ目みたいなドラムになってしまう現象を解決するには大まかに2つの方法がある。

1つは「エアドラム」だ。
口でドラムのフレーズを口ずさみながら身体は一流のドラマーのようにドラムを叩くフリをする。これが一番良い。
これの良いところには人間じゃ叩けんやろってフレーズが発生しにくいという点にもある。
ノリノリでやればやるほど良いフレーズが出やすいから脇目も振らずにすると良い。
欠点は人に見られると正気を疑われるところだが、人に見られるような場所で作曲をしてる時点で問題があるので実質ノーリスクである。
ちなみにこの方法は他の全ての楽器に流用できる。僕もイメージの中では一流のヴァイオリ二ストだ。

もう1つは「ピアノロール上で適当にずらす」ことた。
打ち込んだドラムパターンを、マウスを用いて適当にタイミングをズラしていく。
で、偶然良いものが出来るのに期待するやり方である。
メリットは自身の知識や常識をぶち壊す様な破壊的フレーズが生まれる点。
デメリットは「サイコロを4つ振って全部6が出るまで帰れません」みたいなノリなので完成までにかかる時間が全く読めないところだ。

上の2つを組み合わせたりしながらやってみて欲しい。


④絶対にお行儀よく終止するメロディとコード

これも多い。
どういうことかと言うと、ドレミファソラシドのドの音で終わるメロディが多いですよねって話だ。
保育園とかで「C-G-C」のピアノ伴奏と共に礼をする謎の儀式を経験したことがあるだろうか。経験がない人は上のコードを弾いてみたら良い。
とにかく、このパターンがとても良くお似合いな展開でメロディが終わるパターン、とても多い。

全然ダメとかでは無いが、酷いものでは今までの流れをぶった切ってまでこの形にもってこようとする曲もあるものだから、このパターンには初心者を引き寄せる魔力があるんだと思う。

なので自分が初心者である自覚があるなら、「保育園パターンになってないか」「なっているとしても、明確なコンセプトの為にそうなってるのか」を意識してみて欲しい。

これはドラムの時も話したが、この保育園終止が悪いということではない。メロディの締め方が分からないからコンセプトも無くとりあえずこうした、みたいになってないか?という話である。


⑤音が篭ってる上にドライすぎる

これも多い。
メロディやハーモニーがどんだけ良かろうが音がモコモコで空間的にも縮こまってるせいで魅力が伝わらないパターンだ。
逆に、音がシャカシャカしてるパターンも無くはないが少ない。基本的に初心者は籠るのだ。

それから必ずと言っていいほど、何の加工感も無い。あたかも「呼び出した音源を丸まんまお出し致しました!」みたいな音がする。
一流のピアニストが演奏するグランドピアノの生音を凄腕のエンジニアがスタジオ録音してるならそれでも良い音になるかもしれないが、無料のピアノ音源を生で出されても食べにくいのだ。

これらは解決方法が明確にある。
まず1つがEQを使うこと。StudioOnePrimeだろうがGarageBandだろうが絶対に音質を調整できるやつがある。弄ろう。高音域を稼ごう。

もう1つがコンプを使うこと。
コンプレッサーってエフェクターが必ずある。プリセットを使うなり、とりあえず強めにかけるなりすること。
「コンプの掛けすぎは楽曲の良さを殺す」「表現のニュアンスを狭める」とか書いてる教本も多いが、それは遥か先の話であって初心者な僕らには関係ない。現代で流行ってる曲のほとんどはバチバチにコンプ掛けてあるんだし問題無い。ドンドン掛けていこう。掛けすぎにはそのうち気づけるようになる。

最後は空間系エフェクターをのせること。
ドライすぎる音というのは、リバーブやディレイ、エコーが掛かってない音のことを言う。
お風呂になるくらい掛けろとは言わないがとりあえずやや強めに使ってみよう。
使いすぎでキモイかも、となったら弱めればいいのだ。弱いとこから調整するよりよほど良い。

⑥コンセプトが無い

最後はこれ。少し言葉が強すぎる気がするが、オブラートに包んでもしょうがないのでこう言う。

初心者さんだなぁ、と思われる大きな要素だ。
歌詞にはとても強いコンセプトを感じるのにそれを表現する為の編曲をしていない、というのがとても多い。

恐らく作編曲に関して「それらしい曲を作ろう」という意識が先行しすぎているのが原因だと感じる。

良くある楽器構成で、良く聞くコード進行で、耳障りの良いサウンドで、基本スケールを良く守ったリードを演奏する。まるで誰かに怒られるのが怖いかのような曲だ。

僕ら初心者が好きだった歌は、果たしてそのようなものだったか。
僕ら初心者が表現したい事は、果たしてそのようなものだったか。

一度ここをよくよくしっかり考えてみると良い。
楽しい歌なら楽しい楽器を、悲しいなら悲しいメロディを、悲しいことを楽しいサウンドに紛れさせるなら、強がるようなアレンジを考えるべきなのだ。

僕らは初心者。商業作家じゃない。
誰にも怒られる謂れは無いし、誰にも邪魔させてはいけない。
精一杯表現してみよう。

◇最後に

ここに書いていることの殆どは僕が経験してきたことで、その時にこういうことが分かってればな〜〜と思ったことです。
経験を積むにつれて、ここに書いていることの半分くらいは結果的に真実で無かったと察することが出来ます。

もしこれを読んでいる貴方が初心者さんで、初心者卒業の日を迎えたなら、また誰か別の初心者さんに寄り添ってあげてくださいね。
初心者の時の気持ちは経験と共に忘れられてしまうものですから。

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