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少女と子豚と裏薗のお話①

昔々あるところにとってもかわいい女の子がいました。オシャレなことが大好きで、優しくて、人のことをしっかりと考えられる女の子がいました。ただただ可愛らしくて優しい小さな小さな女の子。オシャレが好きで、カメラも好きで、カメラを向けられたらすぐにおすまし顔でポーズを撮ってしまうような、ただの少女がいました。
でもこれはただの過去で、今はもう存在しない少女です。
しばらくたってその少女は少女ではなくなりました。他人よりも自分を優先し、自分の首を絞めていき、脳味噌も心も腐っていきました。少女ではなく子豚に変わってしまいました。
子豚はドロドロに溶けた脳味噌と共に考えます。私は何を見てきたんだろう、何を考えてきたんだろう、何を大切にしていたんだろう。必死に考えましたが答えは出ませんでした。困った困った。結局子豚はそのまま腐ってしまいました。子豚は大切な何かを失ったまま日々ぼんやりと過ごしていました。
子豚は眼球も溶けてしまったので、世の中の目に見えるものが全てぼやけて歪んで見えます。だから本当のことが見えません。赤信号も青信号に見えるので、そのまま渡ってしまうようなものです。子豚は目に見える全てのものは敵だと認識していました。
子豚は鼓膜も溶けてしまったので、正しい音や言葉が聞こえません。どんなに素敵なメロディーも、美しい風のそよそよとした囁きも、全て聞こえません。代わりに子豚の耳には毒々しい電波だけ聞こえます。赤や青紫の濁ったような、頭蓋骨を叩き割るような音だけ聞こえます。子豚はそれが当たり前だと思ってしまったので、その毒を受け入れ、抵抗することをやめました。
そのうち子豚は心も溶けてなくなってしまったので、いよいよ子豚は何もなく、空っぽになってしまいました。子豚の中には沢山の毒と怒りと悲しみと憎しみしか詰まっていませんでした。

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