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フツーのOLが、東大大学院 情報学環 教育部に合格するまでの話。

日中は会社に勤めていますが、この春から東京大学大学院 情報学環 教育部というところで、2年間、平日夕方〜夜間にかけて、情報・メディア・コミュニケーション・ジャーナリズムなどについて横断的に学ぶことになりました。

▼情報学環 教育部についてはこちら
http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/course/870

この組織は東大大学院附属の教育機関で、東大の学部生以外に、他大生や社会人にも門扉が開かれています。唯一、大学院生だけが入ることを許されていません。

ただ、門扉が開かれていると謳いつつ、試験は平日午後、授業も平日(午後〜夜間)にしか行われないので、フリーや自営業の方、会社員でも時間の融通が利く方でないと通いづらいです。普通の会社員だと、周囲のそれなりの合意がないと通えないといえるでしょう。
年間6単位取得すれば進級できますが、修了証をもらいたいのであれば2年間で24単位取る必要があるので、1回2単位ないし4単位の授業を夏学期・冬学期合わせて年間で12単位取得する必要があります。評価方法は出席だったりレポートだったり先生によっていろいろですが、他の学生さんも本在籍の学部なり大学なりの授業があるのである程度は「ゆるい」とのこと。それでもあらかじめ先生に社会人であることを言っておくとかしたほうがよいのかなとは思います。

この情報がネットのどこにも出ていないので、できる限りの人脈をたどっていろいろな方に情報提供していただきました。
でも、やはり合格して学費を払ってから参加する最初のガイダンスでしかわからない情報もあり、だからこそ社会人の応募は少ないんだろうなぁと思った次第です。しかも事務局は平日9-17時しか空いておらず、12-13時は閉室時間なので電話で聞けません。時間に余裕があればメールで聞くのがよいとは思いますが、急ぎの場合はなんとか電話するしかないでしょう。

応募にあたっては、所定の用紙に経歴や志望理由、研究計画書、昨年度の授業シラバスを見て自分がどれをとりたいかとその理由を書くというもので、送りさえすれば受験が許可されるシステムだと思われます。

1次試験は、筆記試験で毎年出題テーマや形式が少しずつ異なるようですが、2016年度は流行りの人工知能(AI)についての論述2問がメインの出題でした。
研究テーマとして掲げていたルーマンやジンメルなどのコミュニケーション論のことを中心に本を読んでいたのですが、それ以外にも『角川インターネット講座 (4) ネットが生んだ文化誰もが表現者の時代 』(KADOKAWA/川上 量生 監修)や『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの 』(KADOKAWA/松尾豊 著) などを読んでおいてよかったです。

1次試験の合格発表は平日の午後で、「掲示板を『正』とするが、WEBでも発表はする」ということで、一応WEBで確認することができたので、会社を休んだり、交通費を払ったりすることなく助かりました。

そして、2次試験の面接。
神戸出張の翌日で、しかも受験番号が若くていちばん早い時間から始まることになってしまいました。前日、仕事でお世話になっている先生方の接待があり、その日のうちに都内には戻れなかったので、早朝の新幹線に乗り(始発のローカル線が目の前で行ってしまったのでダッシュでタクシーに乗ってなんとか新幹線に間に合うという綱渡り状態だった)、ギリギリ間に合いました。

聞かれたのは、
・志望動機
・研究テーマについて、どのような書籍を読んでいるのか(古典、現在の社会学者両方について問われた)
・研究テーマに絡めて、SNSとリアルの関係性について個人的に思うことは何か
・社会人だが、それなりの学費を払ってまでして通いたいのか、通えるのか
といった内容でした。少し圧迫面接っぽいなと思いましたが、後から聞くと他の方も圧迫っぽかったと話していました。
神戸からフラフラになって朝一で駆けつけた身としては、なんとか面接に間に合って終わっただけで安心したのでした(笑)

そして、その後の合格発表については、「平日午後、掲示板にて発表する」とのみ通知されて、WEBで発表されるのかどうかよくわかりませんでした。仮に合格したとしたら、学費の振込用紙など各種書類を受け取りに事務局まで行かなくてはいけないということでしたが、平日のコアタイムに行けるわけありません。1分でも惜しい繁忙期に休みを取って、不合格の発表だけ見に行くとかありえません。だから、発表の日に受験者のどなたかがtwitterで「合格した!」とか書いていたら、なんとかその人から情報を提供いただこうと思っていました。

そ・し・た・ら!
とある学生さんが、たまたま合格の掲示板を横に写真を撮られていて。
もう写真をめちゃくちゃ拡大しました。

そ・し・た・ら!
私の番号が載っているじゃあないか!
その学生さんが神様に思えました。
しかも偶然にも、同じ面接時間に別部屋で面接を受けていて、終わってから話しながら一緒に帰った学生さんで。その後のやりとりもスムーズで、つくづく運がいいと思いました。

とはいえ、翌日サイトを覗いたら、昨日の発表時刻には掲載されていなかった合格番号がUPされていました。最初からWEBで発表すると言ってほしかった。

事務局の方にはメールや電話で相談をし、相当ご迷惑をおかけしましたが、できるものなら社会人に門扉を開いているのであれば最初から配慮してほしいことが幾つもありました。

学費を納めてから最初のガイダンスで講義シラバスが配られましたが、その授業内容を先生が説明するのが翌日からとか。ありえないです。私、いきなり仕事休むとかできないです。他の学生さんも困ったことでしょう。

そもそも、完全なる調べ不足で恥ずかしいですが、国立大学は土曜日に授業がないって知りませんでした。私立大学出身で、幾つかの私大のプログラムなどにも行ったことがあり、職員の方は交代で土曜日も勤務されているものだと思っていたので、本当に衝撃でした。ハード面からもう私立とは全然違うんですね。

特に、慶應大学はダイバーシティを前提にいろいろなものが組み立てられている気がします。職員の方がどなたも臨機応変に温かく濃やかな心遣いをしてくださるので、本当に気持ちがよいです。

が、東大に関しては研究者育成が主目的だからなのか、まだまだ開かれている感じがしません。私立とはお給料が違うこともわかりますし、BEATというICT教育の研究発表会や、トマ・ピケティの講演なんかにも出席させていただいた身で、とてもこんなこと言えないのはわかっており恐縮なのですが…。

一応、学際的な研究機関というのが売りの教育部なので、少しずつ変えていっていただきたいなと思いました。いや、今後私が相当ご迷惑かけるかもしれず、本当に本当に言いにくいことなのですが。一応、東大生は学費無料ですけど、私は数十万払っているのでちょっと書いちゃいました。ごめんなさい。

それと、今年入学の社会人は5名で、うち女性は私だけでした。さみしい。つくづく私は一般からズレてるんだなと思いました。大学側が狙うメインターゲット(マスコミ志望の学生)と違うのはわかっていますよ。完全なる変な社会人枠採用だともわかっています。それでも、世の女性たちよ、もっと勉強しようよと言いたい。

というか、社会の仕組みがおかしいです。なぜ社会人になったら、自由に学ぶことを制限されてしまうのでしょう。海外では、働きながら大学院に通うのは普通のことのようです。でも、日本では大学を出たら、仕事に打ち込むことばかりが求められます。また、女性向けコンテンツとしてあるのは、婚活という名のお料理教室や自分磨き(という名の自己満足)のための○○みたいなものばかりで、学問することは断絶させられることの方が多い。習い事とかスポーツとかじゃなくて、「継続して学究的に何かに取り組むことは、子を産むことが大きな使命となる女性には不要なこと」と考えている人が多いような気がします。「意識高い系(笑)」と鼻で笑う人も多いです。男性も含めて、皆そう思わされている節があります。たまにはいいですけど、昼間から飲む会を毎週末やっているのって面白いですか? なんとなく惰性でやってませんか? それでいいんですか?

今年はこれでも社会人が多い方なのだそうです。他大の学部生も例年よりは多いのだと聞きましたが、そうは言っても東大生が6〜7割ぐらいはいそうな気がします。マスコミ就職の専門学校的要素があるとはいえ、社会人(や他大生)を入れたほうが全体の学びが深まると思うのでそこらへんも含めて、認知度を上げていっていただきたいです。国立大学の役割は、自分の大学に所属する学生の学びの質だけでなく、日本全体の学びの質を高めることにあると思いますから。

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