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義母の誕生日

義母、86歳の誕生日でした。
人様からは、まだまだ若く見られる義母。日常のテンション感は、若さを保つ秘訣かも知れません。
私はテンション感ってあるのかな? っと考えたら、テンション感どころか、もっと複雑なテンション感だらけの日常。
義母曰く「何歳まで冒険家なの? あなたは。そろそろ自分のためになる冒険をしたらどうなの?」
今更、どうもならないよ。っと心の中でつぶやく私。 
自分の誕生日なんか毎回忘れて、仕事場のジジイ達も私の誕生日どころではない、自分の年齢さえ忘れてるのに。

義母は、私が物書きだった頃を知ってるからか、今の職場が、イカダのようなポンコツ船スタジオだとハッキリと言います。
でもね、私はいつもニコニコして逆らわないんです。(逆らってもしょうがない)
だって、イカダのようなポンコツ船から海のど真ん中に飛び降りるわけにはいかないんです。
だからね、私、この日も心の中で呟いたんです。
「やかまし!ババア! アンタの生き方とアタイらは違うんだよ! 早く誕生日のご馳走を黙って食いな!」
……っと。

翌日、いつものようにポンコツ会社に出勤。
代表は将棋の藤井聡太さんのテレビニュース解説みたいなのを観ながら、横に将棋盤を置いて仕事の編集していました。
「ねえ、社長。幾つになったの?」
「40だ。悪いか?」

30才もサバ読むなよ。でも、死ぬまで定年なんてないらしいです。
年金も長年、国民年金だからか、おまけに若い頃には滞納の王様だったみたい。少ない年金でも何とも思ってないようです。
公務員だった義母は、年金だけでもかなりの額。きれいに着飾ったり美容院に通い続ければ、見た目はそれなり。 
でも、ここのジジイ達は、目が澄んでいて若い。
義母が言う「テンション感」などとは違い、今も苦労を苦労とも思わず、イカダのポンコツ船を必死で漕ぎ続けているわけです。

私の回りは、こんな職人ばかりになりました。
遠方にいる天才肌も、いつもどこか遠くを見つめており、私たちが入り込めない世界にどんどん進んでいます。

私、やっぱり、ここを辞めないことにしました。

悩みながらカフェでこの記事を書いていると、女子高生たちが猿よりウルサイ声でキャーキャー。
「ウルせえーんだ! ボケ! ババアを怒らせるな!」
心で怒鳴ったオバサンは、やはり義母にも本音を言えなかった小心者です。やれやれ👎

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