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【ゼミの紹介】まぎらわしい広告と法律

立正大学データサイエンス学部 准教授 南部あゆみ

欺瞞的デザインパターン(ダークパターン)について話し合う

■欺瞞的デザインパターン(ダークパターン)

 インターネットで買い物をしたら、その後DMが頻繁に送られてくる。なぜだろう。調べてみたら、購入手続の最後に「DMを受け取る/受け取らない」のチェック欄があり、勝手に「DMを受け取る」にチェックが入っていた。こんな経験をしたことがありませんか。しっかり確認していれば、DMのチェック欄に気づきますし、その際にチェックを外しておけばいいだけの話です。しかしページの下の方にあり、ついつい見落としてしまうのです。
 このように、法に反しているわけではないけれど紛らわしい仕様のことを、欺瞞的デザインパターン(ダークパターン)といいます。他にも、「在庫あと1個」「あと1時間でセール終了です」などリミットを強調する手法をはじめ、様々なパターンがあります。

■ゼミでの取り組み

 今期の南部ゼミでは、この欺瞞的デザインパターンを題材に取り上げています。おおまかな流れは以下のとおりです。
①欺瞞的デザインパターンの基本的な知識を整理する
②広告に関する法律を学ぶ(景品表示法、特定商取引法など)
③欺瞞的デザインパターンの中で、違法なものと合法なものとの違いを話し合う
④広告手法の法的問題に関する文献を各自が選び、内容について報告する
 ③の話し合いでも④の報告でも、ある程度の法律知識は必要です。知識がないのに話し合いをしたところで、ただの言いっ放しになってしまうからです。そこで②で前もって法律をレクチャーする時間を設けました。
 ①②は授業形式ですが、ゼミ生は自分のパソコンやスマートフォンで広告の実例を検索しながら、配布資料と見比べます。例えば、代表的な欺瞞的デザインパターンは7類型あると言われています。各パターンについての説明を読みながら、該当する広告をネット上で探すのです。しかし不思議なことに、全く見つけられない類型が複数ありました。緊急性(セール終了まであと〇日)や希少性(在庫残りわずか)は多かったのですが、スニーキング(こっそり有料サービスを紛れ込ませる等)は誰も発見できませんでした。
 この点に関しては、④で文献のひとつに取り上げた、東京工業大学の研究グループの論文Linguistic Dead-Ends and Alphabet Soup: Finding Dark Patterns in Japanese Appsで理由が判明しました。一般的に提唱されている7類型は、西洋文化圏を対象とした研究がもとになっています。そのため、日本では当てはまらない部分があるのです。同論文では日本独自のパターンを見出しており、大変興味深い内容でした。(同論文は英語で書かれていますが、当ゼミでは生成AIも翻訳ソフトも、便利なツールは全て利用可です。)

南部ゼミの様子

■法律と国語力

 法律が絡む問題を勉強する際、まずは知識を頭に入れる必要があります。また、必要な文献に触れることも欠かせません。ここまではインプットの段階です。
 ゼミではインプットの後、実際にトラブルになった広告を用意し、どの表現がなぜいけないのかをゼミ生に説明してもらいました。「なぜ」を説明するのは難しい作業です。インプットした知識を自分なりに咀嚼して目の前の広告に当てはめる必要があり、さらにそれを言語化しなければならないからです。このアウトプットの段階では、言葉で伝える力が問われます。
 加えて欺瞞的デザインパターンは、明らかな違法ではありません。それゆえ問題点を指摘するには、さらに言葉を尽くさなければなりません。ゼミ生には、スマートフォン片手に散々悩んでもらいました。今期は「伝える」までを目標に定めていますが、いずれは「書く」段階にまでステップアップできればと考えています。

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