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モノローグでモノクロームな世界
第六部 第一章
三、
一時期をピークに、次第に自殺の二文字は世間から消えていった。
実際のところは、その数が減少したわけではない。意図的に、それらの報道がされなくなっただけだった。
人々は、そうして与えられる安心、安全に満足し、何も望まなくなっていった。止まった世界の中で人々は次第に真っ白に染まっていく。
町も人も世界も、全てが真っ白だった。
「ようやく復讐が終わったよ。」
狂った箱庭の上で独り静かに笑う。
笑ってみせる。
これは復讐だ。だから、自分にとって、この行為は正しい筈だ。
李鳥の翼を、その醜い欲望で、その醜いエゴで奪った世界への復讐だ。
そして、何より彼女を傷つけたまま、のうのうと生きようとした自分への。
地下室で一緒だった男に取り入ったのも、
彼がやがて研究していた内容に興味を持つであろうことも、
何故か、あの時私には分かっていた。
そして、本当にこんな世界ができあがったならば、人々は生きる希望を失い、未来を描くことも、明日を夢見ることもしなくなるであろうことも。
全て、分かっていた。
ナインヘルツも、僕と一緒にこの世界のシステムを作り上げた識者達も。
本当は、この世界に暮らす多くの人々も。
だが、人々はどこかで望んでいたのだ。
誰も傷つけず、誰にも傷つけられることなく、安心安全にただ生きることを。
皆が平等で美しい世界を。
汚い感情を見なくていい楽園を。
楽園がただただどこまでも続く世界であることを。
そうして、壁の中に私達は私達の楽園を創りあげた。
私達は、全員この世界のかみさまになったような気でいた。
本当は、無理なことなど、とうに気づいていたはずなのに。
破綻など最初からしていたはずなのに。
だが、私達はそれらの破綻を見ないようにし、見えないように意識下に葬りさった。全員で嘘をつき、嘘を正当化するために、大掛かりな箱作りをし、その中で笑いながら眠り続けた。
もう誰にもこの吐き続けた嘘を、嘘だと言う事はできなかった。
止め方は誰にももう思い出せなかった。
ただ、それだけだった。
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