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アラベスクもしくはトロイメライ 10

第三章 『死にたがり、壊したがり。奇麗だから、さぁ、壊しましょう』

一、

 W学園に纏わる黒い噂!!!

 県下有数のお嬢様校として知られるW学園。カソリック系のミッション・スクールとして、また、その有名大学への進学率の高さから、県内の受験生に高い人気を誇るこのW学園には、ある黒い噂が付き纏うのを、読者の皆様はご存知だろうか。

 発端は、今から十年前の冬に遡る。
高等部の校舎裏のテニス・コート付近から大量の小動物の死体が発見されたのだ。小動物の種類や複数の種類だったのか等事件の詳細は具体的に明らかにされていないが、何れの死体からも農薬系の毒物が確認され、警察は当時、事件、事故両面から捜査を開始した。小動物が入れられていたと見られるゲージが複数発見された事や、死因となった農薬が捜査の早い段階で特定された事もあり、当時、関係者の間では、解決は時間の問題とみられていた。だが、現在に至っても、犯人の特定どころか、解決に繋がるような決定的証拠は見つかっていない。

 そして、この小動物の事件はここで終わらなかったのである。
翌年の同日、十二月二十五日の早朝、またも小動物の死体が巡回中の警備員により、学園の敷地内で発見された。それも、この死体は誰もが目にする、学園の門の柵にくし刺し状態にされていたと言う。無論、学園側もこの事態を重く受け止め、迅速な事件の解明と周辺の警備の強化を警察に強く要請したが、結局、この事件においても犯人どころか、その目星ですら掴めず現在に至る。その後も、この一年に一度の残虐な犯行は続き、更に、そのターゲットも最初の小動物(鼠だと思われるが)から、雀、猫、兎、犬と年々その大きさ、犯行の残虐性が増しているように、筆者には思われる。
 

 なぜ、年に一度なのか。なぜ、何れもW学園に纏わる場所で発見されるのか。あるいは、なぜクリスマスのこの時期、すなわち、十二月二十五日あるいは、二十四日に犯行を行うのか。
 疑問は挙げれば尽きないが、何れにしても師走が押し迫るこの時期、学園の関係者はカレンダーを見つめながら、恐怖に震えていることだろう。学園があるいは、学園の関係者がこの事件にどの程度、関係性を持っているのかは不明だが、健全な学び舎として、一刻も早い事件解決を願うばかりだ。

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