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モノローグでモノクロームな世界

第八部 第二章
一、
 だが、いつだって終わりは突然やってくるものだ。

あれは、何度目かの調査に出た時の事だった。
調査には、安全面を考え、主に私と副島博士の二人で行うことが多かった。防護服に身を包み、調査をし安全と我々が判断した場所は、後日、ワームの仲間が西暦時代の物資や資源を収集しにくる。そうして、サカイでそれらをエネルギーや必要な物資へと交換する。壁の中から追い出された私達は、そんな生活をここ数年ずっと続けてきた。

 この調査の目的は、壁の外に人が住める土地があるかを調査することだった。その頃の私達の認識は、壁の外の土地は、未だあの時の残留物が残っており、生物や土地、空気を変容させているというものだった。
 壁の外で人が住めるなど、馬鹿げた空想だ。調査を始めるまでは、多くの者がそう思っていた。
だが、実際は違った。無論、未だ人が安全に生活ができるとは言い難い。
それに太陽の問題もある。
だが、一面、見る影も無く、荒れ果て何も無かった大地に、僅かながらも食物の存在が確認できた。この事は、我々に大きな希望の光を与えた。

 我々が戻る先は、壁の中ではない。

植物の存在を知った我々は、更に調査に励むことにした。始めは、ナインヘルツと遭遇することを想定し、武器を携行していたが、何度も調査を続けるうちに、彼らが全く壁の外を調査していないことに気が付いた。彼らは元より、あの壁から出る気など更々無いのであろうことがこれで、はっきりと解った。

 壁の中に楽園を創った彼らにとって、態々壁の外に出るなど、それこそ無意味な行為なのだろう。
楽園を追われた者のみが、こうして真の楽園を追い求め、彷徨い続ける。
私には、痛い程、その構図がよく解った。
似ているのだ。
かつての世界の、否、かつての私達の姿に。
李鳥を締め出したあの世界に。

 相変わらず、太陽はこの世界を照らすことはない。
その冷気渦巻く大地に女が一人立っていた。

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