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アラベスクもしくはトロイメライ 7

 第二章 二

 いつだって、思い起こせば輪を乱すのは私の役目だった。
幼稚園に通っていた頃、いつも二人ペアで遊んでいる女の子達がいた。そこに私が入り込み、彼女達の仲を壊した。最初は三人で楽しく遊んでいただけだったはずなのに。一体、どこで道を誤ったのだろうか。
 二人がいつもしていたお揃いの赤いリボンが地に落ち、汚れていくのをただ茫然と眺めることしかできなかった。男女が絡むと、尚更、事態は悪化した。あんなに仲がよかったのに、皆、ゆっくりと、確実に壊れていく。私たちはどれも出来損ないの幾何学模様だった。

 そして、いつしか私は悟った。永遠に一人で生きなければいけないことを。それを実行するために必要な物。その手法を身に着ける事に私は専念した。
ただ平穏に、孤独でいるために。このコミュニティの中でそれを実行するために必要な事は、誰が見ても解りやすく、自分自身の価値をあげることだ。幸い、私にとって学校の勉強はゲームのような物だった。マニュアル通りにやれば、いとも簡単にクリアできるゲーム。このコミュニティで唯一、持って生まれた物以外で身につけることができる価値。
 華唯と知り合ったのは、小学生の頃だ。私が一人でいきることとその意味を知った頃、彼女もまた一人きりで生きていた。私達はすぐに意気投合した。なぜならば、私達はお互いがお互いの領域に踏み込まない事を理解していたからだ。だが、少なくとも私にとって、彼女は壊したくない人であり続けたし、これが親友の定義に当てはまらないとしても大切であることには変わらない。

 だから、私は風花と華唯を直接、引き合わせた事はない。
最初から2でなければ、壊れようがないのだから。

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