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ステンレスフレットのススメ

初めて自分の楽器にステンレスフレットを使ってみましたが、かなり良い感じです。良い機会なので現時点での考えを書いていこうと思います。

まず何と言ってもチョーキングやビブラートでの弦の滑りが良いです。ニッケルだと弦がフレットにめり込んで引っ掛かるような手応えがありますが、きちんと仕上げたステンレスは本当にヌメヌメ。ニッケルの手応えに慣れていると相当な違和感があるし好みの問題ですが、自分は揺らしたり引っ張ったり積極的にやりたいので実に快適です。ただ普通に“ベース”を弾く場面ではニッケルフレットの弦を掴んでくれる感じが安心なのも確かなので、万人にオススメできるものではないと感じます。楽器の用途次第でもあるかなと。

(でもニッケルも磨き込めば手応えはかなり近くはなります。もっともすぐ薄っすらサビるので持続性は無いですが。素材自体の硬さというより表面の状態が手応えを支配してる気がしないでもないです。逆にステンでもちゃんと磨かなければ引っかかり感は残るので…)


今回ステンを打ったのは33インチHi-C5弦のHALIBUTですが、フレット云々以前に元々“ベース”としてグッと来る楽器ではないしそういう用途で使ってもないので良かったんだと思います。少し前に組んだジャズベでは明確な根拠なしにEVO Goldを使ってみました(普段散々使ってはいますが自分の楽器に使うのは初(打ち心地がメチャクチャ良いというのが決め手、あと見た目…))が、硬さはニッケルとステンの中間くらいということになってるし、実際手応えもそんな印象です。なので結果的に良い選択だったということがステンとの比較で確かめられました。普通の“ベース”にステンは手応えの面で過剰かもしれない…。

削れない・サビないというのもステンの大きな特長ですが、それは今後使っていく中で実感できるのかなと。


さて肝心の音ですが、もともと自分は素材そのものが直接大きく音に影響するとは考えていません。今回もニッケルから打ち替えて音の変化は全く感じないです。

ステンは音が硬くなる、とよく言われますが、その要因は思い込み・イメージの他、打ち方にもあるかもしれません。
ニッケルとは作業の勝手が異なるので、ニッケルにしか慣れていない人はステンを適切に打ち込めない・仕上げられない可能性がきわめて高く、その作業の不完全さは結果的に音に影響します。

また、さらに穿った見方をすれば、そうした「ニッケルにしか慣れていない人」がステンでの作業を嫌って「音が硬くなる(ので良くない)」と言っている、というのが考えられます。
ニッケルの方が切ったり削ったりが遥かに楽ですから、それに慣れ親しんだベテランからすればステンは避けたいものでしょう。体力や気力が落ちていれば尚更です。

そしてそれが「ベテランの言うことだから」という説得力の持ち方をしてしまうとしたら……

(ちなみに作業の難しさ自体はどちらが高いということは無いです。それぞれに対して適切なやり方が求められるので、一方のやり方を他方にそのまま当てはめても良い結果は得られない、ということです。なので逆にステンばかり打っている人にとってはニッケルを打つのが難しく感じられるでしょう。)


というわけで、「音が硬くなる」と言われている要因としては上述ものが大きい、と個人的にかなりの確信を持っています。とはいえ、それはニッケルとステンで音の違いが無いという事実を補強しません。実際違いがあるのか?正直それは分かりません。

録音を残して比較すればよかったのに、という話ですが、今回は指板延長やそれに伴う指板全体の削り直しをしてしまっているし、明らかに複数の条件が変わっているので無意味でしょう。作業期間を挟むと(挟まなくてもだけど)同じように演奏すること自体不可能です。

主観的にどう感じるかだけ確認できれば良いという思いで作業を進めて、音については何の変化も感じませんでした。それで充分です。サビない・削れない・弦が良く滑るという明らかな利点だけが得られた、という結果です。

音の変化は個人的に感じなかったというだけなので人によるし楽器にもよるでしょう。今のところは「個人的には違いは感じないが、何か変わる可能性はあるし、それがどういう変化でどの程度のものなのかは場合による」という考えです。

もう少し意見らしい形にするなら、「もしニッケルからステンにして音の変化があるとしても楽器自体の性格を根本的に覆すほどのものではないので、サビない・削れない・弦が良く滑るという要素を利点として感じるならばそれらが確実に得られるステンは大変オススメできます。快適に楽器と向き合えるならば、それが音を良くする助けになるでしょう。」ということになります。


今のところはこんな感じですが、やはり条件揃えてきちんとニッケルとステンを比較してみたいです。

何にせよ、「分からない」という姿勢は保ち続けたいものですね。自分の理解が絶対だと思ってそれを更新できないのが一番マズい。

幸い、意見をコロコロ変えるのは得意な方なのです。

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