有栖川有栖×一穂ミチ ライブトーク!!📚

WEB別冊文藝春秋さんのオンライントークショーを拝見しました✨
(仕事の都合でアーカイブで見ました、本当にアーカイブありがたい…)
拙い文章にはなりますが、ライブレポートを投稿させていただきます!

トークの内容ですが、前半の有栖川先生の作品についての話だけでも
①有栖川先生が書く紳士的、理想的な警察
②アリスが火村の内面に踏み込まないのはなぜ?
③火村の禁煙問題(喫煙を取り巻く時代の変化)
④火村とアリスのファッション
⑤準レギュラー陣(片桐、朝井、真野、コマチ)の話
⑥ドラマ化について
etc…

あまりに豪華すぎる。
有栖川作品のファンなら絶対楽しい話ばかりです。まだ見てない方、ぜひ見ましょう🤝
(学生アリスシリーズのお話も少しありました!)
一穂先生の進行も神。痒いところに手が届きすぎる。ファンが聞きたかったことをたくさん聞いてくださいました。

その中でも、とくに印象的だった話について、自分なりの感想を。

アリスが火村の内面に踏み込まないのはなぜ?

『人を殺したいと思ったことがある』
火村が犯罪を研究する理由として語ったこの言葉。
かなり強烈ですし、私個人としても火村が誰を、どんな理由で殺したいと思ったのかずっと気になっていました。
でも火村がもつその昏い部分に、アリスは踏み込もうとしない。
そのうち明かされるときがくるのかなぁと思っていましたが、今回のライブトークで有栖川先生が"本来はそういう(踏み込まない)ものじゃないの?"とおっしゃっていてハッとしました。

たしかに、もし自分の大切な友人が『人を殺したいと思ったことがある』と言ったとしたら。
私は積極的にその内面に踏み込むことはしないだろうなと思います。気になりはするけれど、そう簡単に踏み込んで良い問題ではないと思うし、聞いたところで抱えきれないかもしれない。

作品をエンタメとして捉えれば、火村の過去が明かされることは作品のエッセンスになるかもしれないけれど、有栖川先生はもっとリアルに人の関係性を描いているんだなと思いました。
より現実に近い創作だから、惹きつけられるものがあるのかな。

…でもやっぱり気になるなぁ。笑

ドラマ化について

『火村シリーズ』は過去に連続テレビドラマとして映像化されています。
ドラマ化には原作を愛するが故にさまざまな意見もありましたが(これは原作がある映像作品なら共通の事象だと思います)、私はこのドラマが本当に大好きです。たぶん各回10回以上は見てる。
改変されているところもありますが、どの話も綺麗にまとまっていると思うし、原作を読んでいるからこそ知っている小ネタ(?)を見つけると思わずニンマリしてしまったり。笑

ドラマ化する際にただ原作に忠実であれば面白い、というわけでもないって話に首がもげるほど頷きました。
小説は小説としての面白さ、ドラマはドラマとしての面白さがある。
有栖川先生は"火村シリーズはドラマ化に向いてない"とおっしゃっていましたが、そんなことないです…!第三弾をお待ちしております🙇‍♀️

それと、ドラマで興味をもって小説を手にとった読者について『本来なら出会えなかった人たちと会えた』とおっしゃっていたのが印象的でした。
どんなきっかけであれ、ミステリを一緒に楽しめる仲間が増えるってとても嬉しいです。

"自分の中の火村英生"って良い言葉ですね〜!
自分が持つ火村像を大事に、これからの作品も楽しみに待ちたいです。

5分の休憩を挟んで、後半は一穂先生の作品について有栖川先生が聞き手となって話が進んでいきます。
有栖川先生、一穂先生の作品の話になるとかなり饒舌になられていて、それだけ話したかったんだなぁと思いました。とてもチャーミングでした💕

キャラクターの"解像度"について

有栖川先生曰く、一穂先生の作品は作中に出てくる人物の解像度が高いと。
解像度の上げ方っていろんな手法がありそうですが、お二人の『キャラ設定を作り込みすぎない』っていう共通点には納得。
現実の世界で、仕事やプライベートでお付き合いする人たちは、自分に見せてくれる面しか知らないのに、全て設定を決めてしまったらリアルじゃなくなるという話には何度も頷きました。
そう思うと、普段会っている人たちのどれくらいのことを自分は知っていて接しているのかなとか、その人の全部を知っているようなつもりで接することがどれだけエゴイスティックなことなのかと改めて感じたり。
小説という創作物に現実味を持たせ、どこまでも誠実に向き合っているお二人の考え方に触れられた瞬間でした。

自分の作品について"神様"と崇める有栖川先生に語られて固まっちゃっている一穂先生、完全にファンの姿そのものですごく可愛かったです。笑

火村とアリスの"真っ当さ"

一穂先生が、火村とアリスの真っ当さ、芯がぶれずにいてくれるところが好きという話をされていて、本当に共感の一言でした!
ことあるたびに書いているのですが、私は『絶叫城殺人事件』でアリスと火村が交わした会話にすごく感動したことがありました。

『理不尽にも、ただ殺すことだけを目的に男が行きずりの女を刺す。いつの時代、どこの国でも起こる事件や。その逆は聞かない。俺が女やったら、その事実だけで男を信じない』
『何故そんなことが起きるのか、説明する義務は男にある。お前を含めてな』

今でこそ、女性が社会に出て働くことは当たり前になったし、LGBTQの方たちを取り巻く環境が変わってきたけれど、それでも"社会的に弱い"とされてきた立場はそんなにすんなりとは変わりません。

火村シリーズは、30年続いているシリーズものですが、一貫して"性"を軽く扱われたと、不快な思いをしたことは私はありません。
上に書いたセリフも、男性である有栖川先生が、男性のキャラクターに言わせたというのが本当にすごいと思っていて。
世間の風潮が変わる前からフラットに物事を捉えている方もいたという事実に、とても救われた気持ちになりました。
語っているのは火村とアリスだけれど、そのセリフには有栖川先生の想いや考えが反映されているのかなぁ…


話は逸れましたが。
34歳のまま歳をとらない火村とアリスは、"34歳"という年齢のわりには若く見えるなぁと思うのですが(最新作での自転車爆走レースとかめっちゃ可愛かった)、私も歳を重ねて彼らの年齢を追い抜く時がきたら、また違った風に思ったりするのかなというのも今後の楽しみの一つです。


最後に

今後書いてみたい話で、一穂先生は『黒でも白でもない灰色の話』、有栖川先生は『火村とアリスが事件を解いてると思う』『学生アリスシリーズの決着を』という話をされていました。
自分の好きな作家さんが、この先書きたいと思っていることがあると知ることができるってこの上なく幸せなことだなぁと思います。
新しい物語が読める日が来るのを楽しみに待ちたいです。

最後に、今回このようなライブトークを企画してくださって本当にありがとうございました!
とっても楽しくて興味深くて、それこそ それぞれの先生の作品の"解像度"が上がるような時間でした。
もし今後も機会があれば、第二弾、第三弾と続けてほしいです!
ネタバレありの対談とかも面白そうだなぁ😌

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