お花②

トルコキキョウ

「こんにちは」静か。
「お店で、美しくて高貴な感じだなと思いました」静か。
深呼吸する。無になる、と思う。じっと見る。
「私も美しくなりたいです」
『美しくない存在などありません』
「高貴にもなりたいです」
『すべて尊いのです』
「私は尊くない行動ばかりとってしまいます」
『それが今のあなたの尊さなのです』
「もっと尊くあろうとする気持ちが大事だということですか?」
『そのままで尊いのです』

目をふと下に向けると、ガラスの花瓶を通して、茎が水の中に入っているのが見える。

『あなたは今、愛について悩んでいますね』
「はい」
『これまでの愛はおそらく、咲いた花の美しさだけを見ているような愛だったでしょう。
でもあなたは今、水の、土の大切さを知っている。あなたの今学んでいる愛はそのような深いものなのです』
私は泣く。
「でも‥花がキレイだって言ってるだけのほうが‥見せかけでもそっちのほうが‥」
どんなにラクか。
たとえ、何のために私いるんだろうとか、子供がある程度成長してからも何十年も生きてるのって人間だけだよねとか心の中で思いながらの結婚生活であったとしても。

「でも本当は分かってます。私も彼も。それは本当の幸せではないって。でも‥」
私は泣く。そうして
「誰にも言えないけれど、彼が一番大切です。彼を一番愛しています」
ヤッてもいない、ひと回りも年下の男。
訳がわからないけれど、それでも、彼を一番愛している、彼のためなら何だってできるというのが私の本心だった。

お花がにっこりしてくれた感じ。
『正直であることも尊いことです』
「でも‥本当に愛に生きられるかどうか分かりません」
『それでいいのです。そのまま愛を持って、誇りを持って生きてください』
「誇り」
『あなたは水と土の大切さを知ったのです。花の美しさというのは表面的なもので、人間が作り出しただけのものかもしれない。
あなたはもっと深い愛を学んでいます。そのことに自信と誇りを持ってください』

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