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映画 『十二人の怒れる男 12 Angry Men』

これは非常にアメリカっぽいお話。

18歳の少年にかけられた殺人容疑。
十二人の陪審員たちが 満場一致で「有罪」と認めれば 少年は間違いなく死刑になってしまう。
それは 異常に暑い日。全員の意見が一致するまで出ることが許されない空調の効かない部屋。裁判では 目撃証言などもあり 少年には圧倒的に不利な状況。

早速 最初の投票を行う十二人。
「有罪」十一人
「無罪」一人

「無罪」を主張したのは 陪審員番号8番の建築家の男性。
「無罪」だと思っているからそちらに投票したではない、18歳の少年の命を たった5分で決定するわけにはいかないのだと言う。

満場一致でどちらかの意見になるために、彼らは話し合いを続ける。証言は正しいのか、信憑性はあるのか、疑問点はないのか。

冒頭で「アメリカっぽい」と言ったのは この陪審員たちのキャラクターにある。
出身地で人を判断する人もいる。とにかくなんでもいいから早く帰ろうとしている人もいる。意見をコロコロ変える人もいる。お年寄りを敬わない人もいる。途中でふざけ始める人もいる。もちろんこういう人たちは どこの国にもいるので、それが「アメリカっぽい」と言っているわけではない。ただ、少なくとも日本人は 名前も知らない寄せ集めの集団の中では、心の中で思っている「非道徳的なこと」について 口に出したり行動に起こしたりはしないだろうと思うのだ。
そもそも 一番最初の投票(無記名投票ではなく 挙手制)で、十一人が「有罪」に挙手している中 たった一人「無罪」に挙手することもなかなか難しいのではないだろうか。もちろん事案が事案なので 「無罪」に投票する人は必ずいると思うが、無記名投票でない限り 「空気に飲まれる」可能性がある。

また、この十二人は 全員 好き勝手に席を外し 歩きながら 自己主張をする。これは、もしかしたら 映画の演出上のことなのかもしれないが、席を離れることが 推奨されていない日本人であれば 全員がずっと席に座った状態で話し合いが進むのだろうと思う。

それにしても この事件の弁護士は しっかりと弁護士の仕事をしていたとは言い難い。証言に穴があることは明らかなのに、きちんと弁護をしていた感じがしない。それは この少年の元々の素行の悪さなどもあったのだろうが この映画が制作されたアメリカの時代背景なども関連しているのかもしれない。有色人種には厳しい時代。それが 貧しい地域出身の 前科持ちの少年であれば尚更だ。

96分の短時間で 無駄のないスッキリとしたお話。
紛れもない「三密」。

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