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マイクロノベルまとめ(1)

2021年3月から、twitterで書き始めたマイクロノベル。7月までで35編となりました。そのなかで思い入れのあるものや残していきたいものをこちらにまとめたいと思います。

じんわり編


No.26  春告鳥


鶯に憑依して孫たちを待って丸二年。
現世は何やら悪い病が流行っているらしく、婆さんは寂しそうに山の向こうを眺めている。
鯉のぼり不在の竿にとまり鳴いてみる。元気だせやい、儂がおるでの。
婆さんがこっちを見てニッと笑う。
「へたくそじゃね」
なんじゃ気づいとったんか。
          
                       (2021年5月5日)


No.17  おはよう


日曜日なのに早起きなのね。自分で朝御飯作るなんて感心だわ。あ、それはコショウじゃなくてシナモンよ。ああ、目玉焼きは弱火にしたほうが。

喪服よく見つけたね。ネクタイ曲がってるけどもう直してあげられない。後ろ頭の寝癖も。大好きだった。ありがとう。

         
                        (2021年4月4日)

No.11  木陰にて


足元の盛り土にシオンの花を植えながら友は呟いた。

「寿命が短すぎやしないか。柔らかい毛並みや円らな瞳、私を呼ぶ声、思い出すたび胸が張り裂けそうだ」

ああ、わかるさ。だから私も身を震わせ花や葉を散らすのだ。君の寿命も短いのだろう?友よ。いつでも此処で泣くといい。

    
                    (2021年3月22日)


No.1   桜


「今年も会えましたね」向かいの席の老婆が笑った。通勤時間帯というのに車内は空いていて、僕らの他に誰も居ない。返事を躊躇っている間に電車は停まり彼女は立ち上がった。「ま、待って」その瞬間体が大きく傾き揺れた。

「おーい起きろ」友人の声。向かいの窓から満開の桜が見えた。

                 
                     (2021年3月7日)

No.21  春の窓辺


ああ、春がきたんだね。
ベッドで横になったまま窓を見上げる。明らかに写真と判る景色、きっちりと窓ガラスの大きさに貼られているところ、几帳面なあの子らしい。
「ほー、ホケキョ」
あ、下手くそな鳴き真似。
可笑しくて、可愛くて。
ありがとう、最後の春を届けてくれて。

              
                     ( 2021年4月14日)

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