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耳がかゆい

新年早々、耳が炎症を起こしてしまい耳鼻科にかかった。あふれてしまったストレスとか疲れとかはいつも、体のどこかしらに炎症として現れる。今回は耳。朝の耳鼻科の待合室では、大きなテレビにコウメ太夫が映っていた。なんだか夢みたいな光景。

耳の奥がかゆい、ただそれだけのことなのに、年末年始の穏やかで澄みやかな心は雲散霧消し、三半規管をするすると体から引っこ抜きたいという欲望でいっぱいだ。かゆみの虜といってもいい。考えをまとめたり、建設的なことをするちょっとした集中力はおろか、大げさにいえば生きる意欲全般が思いっきり削がれてしまった。

こうなるともう生活の輪郭がなし崩しに曖昧になる。やる予定だったことが何ひとつできずに3連休が終わったことに呆然とした。

生きる意志を取り戻すべく、帰宅したらすぐに豚肉をただ甘辛く煮て、お味噌汁も作った。火を使ったり明確な手順のある作業は頭がすっきりとする。ぐずぐずと先延ばしにしていた仕事のメールも今送り終えた。さっさとお風呂に入って、布団の中でポケモンをやろう。

夜、布団をかぶって目を閉じると、おのずと私の全神経は耳の奥へと向かう。どくどくと脈打つ気配は、生き物が蠢いているみたいだ。もしミギーが寄生していたらこんなかんじなのだろうか。右耳だし。ならばいっそ地球侵略を企んでいてほしい。