ふだんの自分ってなに

前回は「自分らしく生きられない」というタイトルで記事を書きました。「自分らしく生きられていない感覚」のまま生きていくことはつらいことです。ここで少し考えてみたいのは「自分らしさ」ということです。

「自分らしさって何?」って案外むずかしいものですよね。「健康って何だろう」って考えるときは、たいがい健康が損なわれている時です。お金について考える時も、幸せについて考える時も、およそそれが失われて困っている時です。満たされている時にはそんなことを考える必要がないからです。

で、ここで問題なのは「それが失われている時」に考えると、たいていロクな考えが浮かばないということです。ニュートラルに考えるのが難しい。ものごとの悪い面に偏って考えてしまいがちなのです。

前回の記事で少しだけ触れたWRAP(Wellness recovery action plan)では、ふだんのどうということのない、つまり安定している時に「ふだんの自分」を記録しておきます。

たとえば、ふだんの自分が「新しいことにワクワクする」という人もいれば、「新しいことには慎重だ」という人もいます。ふだんは「ひとと過ごすのが好き」という人もいれば「ひとりでいる時間が好き」という人もいます。「勉強が好き」は人もいれば「運動が好き」な人もいます。どちらがいいとか悪いとかではありません。大切なのはそれを知っているのは自分だけということです。誰かが見た自分は関係ありません。「ココアさんってしっかりしてるよね」とか「ココアさんって一人でいること多いよね」とか、そういう人の評価も関係ありません。

メンタルヘルスの調子を測るには、この自分が知っている「ふだんの自分」が基準になります。血圧や体温と同じです。ふだんから血圧が高い人もいれば、平熱が低い人もいます。それと同じように自分の“標準値”を知っておくことが心のSOSをキャッチするのに役に立ちます。

ふだんの自分は人づきあいが苦ではないのに、最近は何だか苦痛に思ってしまうというのはある種のサインですが、もともと人づきあいが苦手な人ががんがん話しかけていくテンションになるというのもまたある種のサインです。

ふだんの自分は何を楽しみ、何を苦手とするのか。どういうルーティンだと安定しているのか。何を大事にしているのか。どれくらいの時間ねむるのがベストなのか。何か困ったことがあると、どんな風な解決策を選ぶことが多いのか…こういったことを“ふだんの自分”として何かに書き留めておく(言語化しておく)ことは、ふだんから血圧や体温を記録しておくのが役に立つのと同じなのです。

生きものだから多少の振れ幅はあります。あるのがふつうです。ただ自分にとって“元に戻せる振れ幅”を知っておくことが、こころのSOSを早めにキャッチできる、自分だけのツールとなるはずです。

次回は体験談も含めて、私自身がどのようなこころのSOSをキャッチしたかについて書いてみたいと思います。

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