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ふとした記録

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アラフィフのおんなが書いている日々の記憶です。 ささいな日常の手触りを思い出すための記録です。
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#レビュー

豪華絢爛・濃厚ヴィジュアル~「ダイナー」

友人たちとよく、好きな作家や本の話をする。 平山夢明という作家をおススメされて知り、「ダイナー」を読んでその世界観に夢中になった。 相当エグい内容だとは聞いていたが想像以上で、冒頭を読み始めてすぐに「食後じゃなくて良かったー」と思ったほどだ。 ダイナーの舞台は、殺し屋専用の食堂。 イメージするだけで鳥肌が立ちそうな残酷な描写と、香りが脳まで届くような美食の描写が交互に訪れる、(原作は)「吐き気と食欲を同時にもよおす」という稀有な物語だ。 その、殺し屋たちの悲哀と、主人公

エンタメのてんこ盛り~「神と共に 第一章:罪と罰」

子供のころから、神話や民話が好きだった。 図書館に陳列された民話や神話・童話のシリーズを、端から読んだ覚えがある。 (ちなみに、好きな童話は「かえるの王様」。かえるを壁に投げつけると王子様になるというシュールな展開が最高) 私は「すべての人の心を動かすスイッチはエンターテイメントだ」という仮説を立てていて、なかでも神話はエンターテイメントに必要な要素がすべて詰まっていると言われているので、勉強のために神話学者ジョゼフ・キャンベルの神話論を読んだりした。 (難解な箇所は結局

”綺麗”と”綺麗ごと”のあいだをつなぐ~「町田くんの世界」

「綺麗」は濁りや穢れのないさま、 「綺麗ごと」は見せかけだけの体裁で実質が伴わないさま。  年を重ねるにつれ、綺麗なものも「綺麗ごと」に見えてくる。  特に選挙期間中である今は、実現が不可能そうな理想論を聞いては「そんなこと言っても現実はねえ」とツッコむ自分もいる。  かといって、理想を否定してばかりいても、何も良くなってはいかない。  「町田くんの世界」は、ちょっと斜に構えた子どもたちや、汚さに慣れてしまった大人たちが、町田くんという無心な男の子と出会うことにより少し