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【比較認知研究】犬の性格は一貫しているか【論文レビュー】

【比較認知研究】犬の性格は一貫しているか【論文レビュー】
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」

 私たちの身近に暮らす犬や猫。彼ら彼女らの「こころ」に、心理学はいかに迫っているのでしょうか。

 「心理学評論」誌・65巻3号(2022年)特集「伴侶動物のこころを探る」に掲載されたいくつかの論文をご紹介しつつ、犬好き猫好き動物好きの皆様と一緒に「犬と猫のこころ」を学んでいきたいと思います。

 今回は、犬の性格はどの程度一貫しているのか、というテーマです。

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【論文】
今野晃嗣 2022 イヌの「性格」に関する研究の展開 心理学評論65(3) pp.270-292.

【本文】
 「性格」すなわちその人(犬)らしさは、概して一貫しているものです。状況が違っても、また時間の経過によっても、その人(犬)らしさは続きます(自我“同一性”という言葉を使うのは、そのためです)。それでも、頑固で強面の人でも、美しく優しい人の前では“でれっ”としてしまうかもしれませんし、頑固さは生涯発達の後半(中年・老年期)には強くなるかもしれません(丸くなる、という可能性もあります)。性格の一貫性の程度を知る必要があるのです。

 数か月の時間間隔で性格形質を測定し、集団内で入れ替わりがどの程度あるかを測定すると、“中程度の”一貫性が見られました。この一貫性の程度は、子犬の時より成犬の場合の方が高く、人同様、犬の場合でも性格が完成するのは成犬以降である、と考えられます。相対的に一貫性が低い子犬の性格でも、とりわけ「訓練応答性」の値は低く、子犬の頃の訓練応答性は成犬のそれと必ずしも関連しないようです(人でいう「十で神童、十五で才子、二十歳過ぎたらただの人」といった感じでしょうか)。

 犬の性格を、生涯にわたって観察した大規模研究は、まだありませんが、ある時点での様々な世代の犬の性格を調査した横断研究(Chopik & Weaver)では、犬の性格の年齢変化は、性格次元ごとにパターンがあることが見出されました。「活動性・興奮性」は若い個体が高く加齢とともに低下し、「動物や人への攻撃性」は、6から8歳の中年期にピークを迎え、「訓練反応性」は7歳半以降に上昇し、「恐怖性」には年齢による変動が見られませんでした。
 
(つづく)

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