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夏の目眩【夏のお花見note参加*ショートショート】

容赦なく照りつける日差しが、夏の訪れを知らせていた。

スマホが手から滑り落ちる。
床に落ちた音が、コン、と冷たく響いた。

頭が、ぐるぐるする。

私は冷たい床に寝っ転がり、目を閉じた。


夏の午後。
エアコンの涼しい風が心地良い。
押し寄せる睡魔に、とっぷりと浸かっていく。

この暑さで、帽子をかぶらずに歩き回ったからだろうか。それとも、寝る時にエアコンのタイマーを入れ忘れて体が冷たくなったからか。床に転がって、何を見るでもなくスマホを見ていたけど、限界。

ツイッター。インスタ。note。スマホを開けばSNSの世界。さらにそこから繋がる、さまざまな人。多様な文体。それぞれの異なる意見。

交錯しては重なり合う波。乗っているつもりが、いつのまにか飲み込まれて、溺れそうになっていた。

どんなに頑張っても、目が開かない。
私は一体どこにいるのだろう。
息が止まりそうな感覚に襲われて、むせ返った。 

手を伸ばしても、波はつかめない。
波を叩いてるのに、まったく音が聞こえない。
遠くからたくさん声が聞こえるのに、隣にはだれもいない。

私はただ知りたかっただけなのに。
この世界のすべてを。
行き着く果てを。
自分がどこにいるかを。何者なのかを。


あきらめて、手足をバタバタさせるのをやめた。すると、あれほど荒ぶっていた波が静寂に包まれていく。

呼吸が戻る。私は波に浮かび、そっと静かに、まるで胎内にいるような暖かさの波間にたゆたっていた。

目の端に、黄色い小さなものが浮かんでいた。
あれは、なんだろう。あれって...


眠りから覚めると、まだ覚醒しきらない頭でカーテンを開けた。窓を開けると、息もできないほどの熱気。蝉の鳴き声が、暑さを何倍も増長させる。

蝉があんなにうるさいのは、求愛行動らしい。
自分はここにいるよ。
だから、きて。
そう教えている。

そんなこと、今まで誰かにいったことあるだろうか。

私、ここにいるよ。
だから隣にきて。
私を見て。

なんて。

ひまわり

今年は初めて、庭で大きなひまわりを育てている。


眩しい黄色と緑が、青空と見事なコントラストで夏を主張している。祖母からもらった風鈴が、チリンと音を立てた。

いつものありきたりな夏の光景。
のはずなのに、どこか違って見えた。

去年、祖父がなくなった。

ひまわりが大好きだったおじいちゃん。私が遊び行くといつも、しわしわの顔をさらにクシャクシャにして笑顔になった。そう、大きな大きな、ひまわりの花のように。

一人になった祖母は、今年はひまわり畑にするといっていた。

祖父が大事にしていた庭の畑。だから、私も庭に植えてみた。それもとびきり大きなやつ。


私はスマホを拾うと、祖母にメールを打ち始めた。もうすぐお盆。
今年はちゃんと行かなきゃ。
目眩はもう、ひいていた。


庭のひまわりの下には、蝉の抜け殻が転がっている。その隣には、黄色い花びらが何枚か散っていた。




ーーー

こちらの夏のお花見noteに参加させて頂きました❗️

今年は初めて大きなひまわりを庭に植えました。
だけど、咲くにはまだ時間がかかりそう。

というわけで、今日。
ひまわり畑に行って撮ってきました🌻✨
暴風雨で倒れちゃってるけど、
ヘッダーの画像も広いひまわり畑です。


お花見noteは8月15日正午まで。
みんなでnoteにひまわり畑🌻を作って、夏のお花見しませんか(⁎•ᴗ•⁎)و


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