夏の消失

窓を開けるとこぼれ落ちる
夏の破片を詩集にはさみ
あの人の鞄に忍ばせた

聴こえてくるのは幻か
記憶のなかに取り残された
白い音楽は鳴り止まない

波間に浮かんでは揺れる
冷たい光に手を伸ばし
砂に埋もれた夢の残滓を
秘密の小瓶に詰め込んで

生ぬるい夜に絡め捕られ
身動きがとれないまま
蛍はもう死んだのか

レモネードの底に沈む
私の夏は消えた