磁気探査での失敗「いや!それ木だろ!」

 磁気探査の主な仕事は不発弾を見つけること。
 不発弾の多くが鉄製なので磁力を持っている。磁力に反応する特殊なセンサーを用いて地中や海中を探査することにより、不発弾を探していく。

 磁力の反応があった場所を反応した物が出てくるまで重機や人力で少しずつ掘っていく。その作業中は地中からいろんな物が掘り起こされる。ほとんどが鉄パイプなどの「鉄くず」や「木材」などだが、この「鉄くず」と「木材」の判別が見た目ではわかりにくく、当初は苦戦した。
木材にもいろんな形状があるのだが、その木材が地中で腐ったり土の色が付着することで、錆びた鉄や鉄製のガラクタにそっくりになっている。

 上記の通り、反応物を発見しないと掘削が終わらない、それすなわち仕事が終わらないと同義である。なので現場の作業員は掘りながら必死になって反応物を探す。
 ある日の現場で、新人の自分も掘りながら反応物を探していると、鉄パイプらしきものが出てきたので、「ありました!みつけました!」と言いながら嬉々としてスコップで掘っていたが、先輩方は自分が掘り出そうとしている物を見るなり、「いや!それ木だろ!」と口々に言った。自分から見るとどう見ても鉄パイプなので、「いやいや!絶対鉄パイプですよ!」と強気に言い放ち、早く次に行きたい先輩方を待たせてそれを掘り出した。そうして自分が掘り出したそれはただの腐った木の棒だった。木製純度100パーセントの木の棒である。自信満々に先輩方を待たせた愚かな自分にできることは「すみませんでした!」と大きな声をだすことだけだった。
 この時、遠目から見てもちゃんと判別ができた先輩方を尊敬するとともに、「もう少し謙虚に人の意見を聞こう」と反省した。


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