磁気探査での失敗 番外編 「斜面を疾走」

磁気探査とは、磁気に反応する特殊なセンサーを使用して不発弾を探す仕事のこと。

 現場は、大体は平坦な地面を2人でセンサーを持って探査しているが、現場によっては斜面で探査をする場合もある。
 斜面でもセンサーを持って歩けるならそのまま探査をするが、人が歩けないような急斜面の場合は、簡易センサーを使用して探査する場合がある。この簡易センサーのことを「ロケーター」という。ロケーターは片手で持つことができ、1人で探査をすることができる。

 ある日の山の斜面の現場は、崖とまではいかないがきつい傾斜がついていた。きれいに伐採されていたが、もとは木や草が生い茂っていた場所だったらしく、ところどころに木の根や切り株が生えていた。
 普通のセンサーを持って歩くのは無理だと判断したので、何人かでそれぞれロケーターを持って斜面を探査することになった。片手はロケーターを持ち、もう片方の手で木の根や切り株を掴みながら探査する方法で作業を進めていた。
 これがなかなか大変で、ずっとボルダリングをしているような姿勢になるので長時間作業を続けているとなかなか疲れた。

 そんな時、斜面の下で作業している先輩から「おーい!ちょっとこっちきてくれないか!」とお呼びがかかった。疲れもあってボーっとしていたのか、なぜか自分は急な斜面を小走りしてしまった。
 先輩に「おい!走るな!危ないぞ!」と言われたころには加速しており、止まろうとする自分の意志とは関係なく斜面を疾走していた。「これは止まらなきゃヤバい!」と思い、スライディングをするような格好で無理やりブレーキをかけると、運よく足が木の根に引っかかって止まることができた。

 この後、現場にいた先輩や上司から「なにやってんだ!現場は走るなっていつも言ってるだろ!」とめちゃくちゃ怒られた。
 幸いけがは擦り傷程度ですんだ。今回はたまたま運が良かっただけで大怪我していたかもしれないし、最悪死んでいた可能性もあったと思うと今でもゾッとする。

 この経験をしたあと、自分はどの現場でも絶対に走らないようにしている。たとえ現場で立場が上の人に「おい!急げよ!」と言われてもそのスタンスは崩していない。「遅いぞ!」と言われて相手が怒っていても関係ない。自分が怪我したり死んだりしても誰も責任をとることはできない。

 磁気探査だけでなく、建築や土木で現場仕事をする方々には「現場では絶対に走らない」ことをおすすめします。
 
 


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