勇者パワハラ疑惑裁判・冒頭陳述
私が裁判長を務めさせていただきます。
まず、この裁判の概要を確認いたします。勇者がパワーハラスメント(パワハラ)を行ったという疑惑が持ち上がり、その真相を明らかにするための裁判が開かれました。
■検察側の冒頭陳述
「裁判長、そして陪審員の皆様。本日、私たちは勇者による重大なパワーハラスメント事件の審理に臨んでおります。
被告人である勇者サイファーこと本名・斉藤はじめ氏は、その地位と力を濫用し、弱者であるゴブリン氏に対して常習的な暴力と暴言を繰り返してきました。具体的には、以下の行為が確認されています:
「目障りなんだよ、くそ雑魚」などの人格を否定するような暴言の使用。
戦闘終了後も攻撃を続ける、過剰かつ不必要な暴力行為。
これらの行為を日常的に繰り返し、複数のゴブリンに精神的・身体的苦痛を与えていた。
さらに重大なのは、これらの行為が魔族との『平和協定』が結ばれた後も継続されていたことです。被告人は協定の存在を知りながら、自らの欲求を満たすためにゴブリンたちを利用し、虐げ続けていました。
我々は、このような行為が断じて許されるものではないことを証明し、被告人に相応の処罰が下されることを求めます。正義と平和のために戦うはずの勇者が、むしろその障害となっていた事実を、この法廷で明らかにしてまいります」
当地域で締結された平和協定書のコピーが提出され、その中に『魔族と人間の平和的共存に関する条項』が確認されました。
■弁護側の冒頭陳述
「裁判長、陪審員の皆様。私は被告人である勇者サイファーこと本名・斉藤はじめ氏の無罪を主張いたします。
確かに、一見すると被告人の行為は過剰に見えるかもしれません。しかし、その背景には以下の重要な要因があることをご理解いただきたいと思います:
勇者としての責務: 被告人は世界の平和を守るという重大な使命を負っています。その行動のすべては、この崇高な目的のためになされたものです。
危険の現実性: 魔族との協定は結ばれたばかりで、依然として人間を襲う魔物が存在していました。被告人の行動は、人々を守るための予防的措置だったのです。
長年の習慣: 被告人は長年、人類を脅かす存在として魔物と戦ってきました。新しい協定下での行動規範の変更には、時間が必要なのです。
善意の誤解: 被告人は、自身の行動がパワーハラスメントに当たるとは認識していませんでした。それは単に、世界平和のために必要な行動だと信じていたのです。
我々は、被告人の行動が決して悪意に基づくものではなく、むしろ過剰な正義感と使命感から生じたものであることを証明してまいります。そして、処罰ではなく、教育と指導こそが、この問題の適切な解決方法であることを主張いたします。」
平和協定を守らず、一部の魔物が起こしたいくつかの傷害事件が報告されました。
続く。
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