勇者パワハラ疑惑裁判・判決





■争点1「平和協定下において、なぜゴブリン氏は戦闘に応じたのか?」


ゴブリン氏の証言:

「ウギウギギウギ、ウッギウギーギウギウギギウッギウギギー」
通訳:
「えー、私は派遣のバイトとして、勇者と戦闘する仕事を請け負いました」

ゴブリン氏の証言:
「ウギウギギウギウギウギギギギ、ウッギウギーギウギウギウギーウギギ」
通訳:
「えー、それは決して暴力的な目的ではなく、教育的・訓練的な目的のためです」

ゴブリン氏の証言:
「ウギウーギウギギウギ、ウッギウギウッギウギーギウギウギギウギウ」
通訳:
「えー、というのも、戦闘は基本的に双方の合意の下で行われる模擬戦闘であり、本質的に平和的な活動です」

ゴブリン氏の証言:
「ギウギウッギギウギウギギウ、ウッギウギーギウギウギギウギウギウ」
通訳:
「えー、なぜなら、これは単なる欲求満足ではなく、冒険者の実戦経験による技能向上という社会的に有益な目的があるからです」


■争点2「戦闘終了後に攻撃が継続したのは事実か?」


ゴブリン氏の証言:

「ウギウギ『ウギギ、ウギウギ』ウギ、ウッギウギーギーウーウーギウギウギギ」
通訳:
「えー、私は『もう降参します、戦いは終わりです』と言いました。しかし、被告人は攻撃を続けました」

ゴブリン氏の証言:
「ウギウッウギギウウギギウギ、ウッギウギーギウギウ『ギギウ』ギーギウ」
通訳:
「えー、言葉が通じていないのだとわかり、急いで戦闘終了後の通例である『討伐報酬』を払いました」

ゴブリン氏の証言:
「ギギウーギギウーウギウギギウギ、ウッギウギーギウギウギギギギウー」
通訳:
「えー、我々ゴブリンの討伐報酬は一律2ゴールドと決まっています。しかし、被告人の攻撃が止む気配はありませんでした」


■最終弁論


検察側:
「被告人の行動は明らかに過剰です。協定の存在を知りながら、ゴブリン氏の降参も無視し、『討伐報酬』という戦闘終了の慣習が守られていたにもかかわらず、被告人は攻撃を続けました。これは単なる職務遂行ではなく、明確なパワハラです。勇者という立場を利用した暴力は、厳しく罰せられるべきです」

弁護側:
「被告人の行動は、長年の戦いの中で培われた習慣によるものです。また、一部の魔物が依然として人間を襲う現状では、厳重な対応も必要です。確かに、被告人はゴブリン語を理解できず、『ウギギ、ウギウギ』という言葉の意味を把握していませんでした。また、長年の戦いの中で『討伐報酬』の慣習が形骸化し、その意味を軽視してしまっていた可能性があります。これらは被告人の過失であり、悪意ある行為ではありません。むしろ、異種族間のコミュニケーションの重要性を示す教訓として捉えるべきです。被告人の行動は行き過ぎた面もありましたが、それは世界の平和を守るという善意から生じたものです。教育と指導で改善できる問題だと考えます」


■判決


「本裁判所は、以下の判決を下します。
被告人は、パワーハラスメントの罪により有罪と認定します。特に、ゴブリン語での降参の意思表示や『討伐報酬』の慣習を無視した点は重大です。しかし、これらは被告人の言語理解の不足や慣習の軽視によるものと考えられます。また、その背景に新しい協定による社会変化があったことも考慮します。
したがって、以下の処分を言い渡します:

  1. 被告人は6ヶ月間の社会奉仕活動に従事すること。この活動には、魔物との協調や非暴力的解決方法の学習を含みます。

  2. 被告人は、被害を受けたゴブリンたちに対して適切な賠償を行うこと。

  3. 被告人は、パワーハラスメント防止と異種族間の平和的共存に関する講習を受講すること。

  4. 今後1年間、被告人の活動は監督下に置かれ、定期的な報告が義務付けられます。

  5. 被告人は、ゴブリン語を含む主要な魔族の言語と文化に関する講習を受講すること。

  6. 被告人は、魔物との戦闘における適切な行動規範を学び、それを普及させる活動に従事すること。

この判決により、被告人の更生、そして人間と魔物の新たな関係構築の一助となることを期待します」

以上で、裁判を終了いたします。

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