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#16 害獣イタチを追い払え!

うちの店子(たなこ:賃借人)はキリスト教の牧師をしているブラジル人のジャクソンさんだ。

入居してから半年ほど経過した頃に、通訳の友人から、家の天井から雨漏りしているとショートメールが入った。

大家の管理の仕方には自主管理と管理委託がある。

管理委託は、不動産屋さんに毎月賃料の5%を払い管理してもらうのが一般的だ。サラリーマン大家など、本業が忙しい人や、遠方の人、戸数が多い人は管理委託している事が多い。クレーム対応や退去立会、修繕や原状回復の業者手配など全て不動産屋さんが行ってくれる。

自主管理は大家が自分で対応しなければならないが、管理費は0円だ。そして私は一戸だけなので、自主管理している。


ついに、恐れていた事が起こった。築古物件投資あるある、雨漏りである。

早速、リビングステージのイトウさん(リフォーム業者)を連れてジャクソンさんのお宅を訪問する。

インターホンを押すとジャクソンさんがドアを開けてくれる。

「オ・ラ!」と覚えたてのポルトガル語(ブラジルの公用語)で挨拶する。

「オツカレサマデス。」と返ってきた。

お詫びの品にシャトレーゼのケーキと、七夕ゼリーを渡した。

ジャクソンさんは日本語が話せないので、通訳の友人にLINE通話で状況を聞く。契約の時1才だったマリナちゃんが画面に現れた!

「こんにちは〜。マリナ大きくなりました〜!」

どうやら、強い雨の日だけ雨漏りするようだ。また、天井から動物が走り回る音や、「ニャー」という鳴き声が聞こえる事があるという。

イトウさんは扇風機の付いた作業服を着て、頭にライトを付けて押入れの上の点検口から屋根裏に入っていった。私も屋根裏を見たが、サウナのように暑かったのですぐに頭を引っ込めた。

ジャクソンさんは超絶優しいメシア系男子なので、クーラーを付けてくれて冷えた緑茶のペットボトルをくれるので待ち時間は快適だ。

しばらくしてイトウさんが屋根裏サウナから戻ってきて、撮った写真を見せてくれた。

ネズミ花火のようなウンチ💩

「ネズミ花火のような糞があったのでイタチですね。今は留守みたいです。居たら目が反射して光るので分かります。」と言った。

ジャクソンさんがすかさず冷えた緑茶をイトウさんに渡す。

「あ、ありがとうございます。美味しい。」

束の間の天国の後、今度は屋根の上の灼熱地獄へとイトウさんは向かう。

私も外に出ると、向かいの家のお爺さんが外に立っている。

「こんにちは。雨漏りしちゃってるみたいで。お騒がせします。」と挨拶すると、

「何年か前にも雨漏りがするって言って屋根直しとったよ。」と情報をくれる。この爺さんは諜報員としての才覚がある。

築古物件なので契約不適合責任免責(売主は売却後の家の瑕疵について責任を負わない)から良いのだが、瑕疵を隠して売却するのはダメである。

私は「過去に雨漏りがあったが修繕済み」との事で購入している。

コーキング(お風呂の縁などにも使われているゴム)は5年ほどの耐久力のため、一度修繕した箇所が劣化したのかもしれない。

イトウさんが灼熱の屋根地獄から戻ってきて、怪しい所をコーキングを打ち直し、イタチの侵入経路となっていると思われる箇所を発見したと教えてくれた。

瓦屋根は雨漏り箇所の特定が難しい
怪しい所をコーキング打ち直し
イタチの侵入経路となっていると思われる箇所

ひとまずこれで様子を見て下さいと言って、イトウさんは帰って行った。(費用請求無し。神。)


害獣駆除の見積もりをLINEで聞ける業者があったので画像を送ってどれくらいかかりそうか聞くと、15万円ほどかかりそうとの事だった。

そんな金はない。

チンピラを投入する時が来たようだな!

チンピラは義兄である。中卒で左官の仕事をしている。常に金欠&投資物件の近くに住んでいるためいつでも呼び出せるのがメリットだ。

LINEを送っても長文が打てないのか、いちいち電話が掛かってくるのは面倒だが。

次の週にチンピラを呼び出す。

物件の外でチンピラを待っていると、ジャクソンさんの奥さんが帰ってきた。どうぞと言って奥さんが玄関のドアを開けると、白と黒の牛のような柄のネコと目が合った。

「ハッ!」と猫が言った。

そして部屋の奥の方に逃げて行ってしまった。

ジャクソンさんが飼っている猫はとてもシャイで大人しく、ジャクソンさんと奥さん以外には姿を見せないのである。

しばらくしてチンピラがチャリで来た。

まず天井裏に入って貰い、箒とチリトリで糞を集め、トイレに流した。仕上げに消毒用エタノールを噴霧した。

今日もイタチは留守のようだったが、念のため水を入れて煙が発生する燻煙剤を天井裏でモクモクとたき、イタチが居たら逃げ出すようにした。イタチは煙が苦手らしい。


そして、今度は屋根から侵入経路と思われる穴を塞ぐ。

チンピラがバケツの中で程よい固さに練り上げ、穴を塞いだ。

ジャクソンさんは「オツカレサマデス。」と、フルーツアイスと緑茶でねぎらってくれる。

雨漏りは大家の責任なのに、なんて優しいんだろう。

そして、私とチンピラにお土産をくれる。中には聖書(日本語版)とCDが入っていた。活字を読まないチンピラにまで。

あと、教会のトイレを増やしたいらしく、チンピラに相談していた。チンピラはそもそも日本語が危ういので、他言語でも気にしないという良さがある。

「それでは、これで様子を見て下さい。また何かあったらご連絡下さい。オブリガート。」と言うと、

「マタネ!チャオチャオ〜!」と見送ってくれる。


1ヶ月ほどしてまたショートメッセージが入り、イタチは入らなくなったが雨漏りが止まっていないと報告があった。

ぐぬぬ…

次回、雨漏り工事編!

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