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不発弾

何だそれはどういうつもりなんだ、とか、
いや彼はあなたのこと好きなのよ、とか、
あわよくばと思っているに決まってる、とか、
ヘテロじゃないんじゃないの、とか、
つき合っちゃいなよ、とか、
つき合ったりしちゃだめよ、とか、
別れなよ、とか(つき合ってない)、
言われる男友達の話。

出会い

出会ったのは、前職のとき、彼が中途入社してきた。私が30歳、ジョド(仮名)が27歳。同じ部、別の課。関わることは多かったし、好みの見た目をしていたので(長身瘦躯、めがね、理系感)最初は浮かれていたし、親しくなろうと働きかけた。
その甲斐あって(?)、ふたりや、少人数で飲みに行くまで発展。
でも親しくなればなるほど、かなりだいぶ相当な拗らせようだということにも気づく。
加えて、当時の弊社はものすごく社畜体質だったので、まだまだ下っ端の私も、下っ端且つ男子であるジョドも、働きまくり、いろいろギリギリ。

仲のいい証左であり、男女ではない証左であり

周囲には「あなたたち仲いいよね」と言われるくらいにはなる。でも私は彼に恋をしていなかったし、向こうはもっと意識してなかっただろう。
4年ほどして、彼が先に辞めたけど、その後もコンスタントに会う。
その間も、私は2回、ジョドは1回、つき合った人もいた。

仲のいい同僚には、ほんとにつき合ってないの?と言われる。例えば、
・ふたりで飲みに行く
・部の飲み会を一緒にぶっちして、観劇に行く
・大雪を警戒した計画運休のときには、前日夜から泊めてもらう
(ファミリータイプの家に住んでいたので私はリビングで寝た)
・辞めた後2週間に1回は雑談の電話がかかってくる
・辞めてからも2か月に1回は飲みに行く
・飲み・ごはんの約束を、お出かけにアップグレードしてくる
(誕生日プレゼントのリクエストを聞かれて、食器と言ったら、合羽橋に行って選ぼう、とか。
ジョドの誕生日だからごはんしよう、と言ったら、初詣に行きたい、とか)
・しっかりとしたお誕生日祝いをしてくれる
・昨年、コロナになってお出かけをキャンセルしたときは、電車で1hのところ、お見舞い持ってうちに来て、ドアノブにそれを掛けて帰って行った。

他の人にこれをされたら、私のこと好きなのかなって思うのかもしれない。彼のこと好きかもってなるのかもしれない。でもならない。何なら見た目はタイプなのに。
要は、優しいのだ。

数年経ってようやく安心して友達だと言える

今も波はあるけど月に1回は会うし、ときどき電話もかかってくる。仕事の相談もされる。
ちょっとだけ何なん、って思うのは、電話かけてきて、彼の喋りたいことを喋り終わり、聞きたいことを聞いたら、黙ってるってところ。
電話を切るでもない。完全なる沈黙。え、寝た?若者がやる寝落ち通話ってやつ?
じゃあ私のターンかしらんと、私が喋り出すけど、大して興味ないと「ふーん」「ほーん」「へー」の生返事三冠王。じゃあ切れば?
それで気づく。
これ、年下の、ちょっとかまちょな女友達ムーブだ。
そうとわかれば話は早い。もはや意識も、牽制も、警戒もしない。

ひよちゃんあたりが、年に2回くらい思い出したように、
「でもジョドに彼女できたらモヤらない?」とか「つき合う方向に運んでみれば?」とか言うけど、もうね、そのターンも終わったの。
じじばばになったら茶飲み友達になるの。

いろんなタイミングを逸した結果、恋の不発弾のようだなと思った、人との話。


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