マはマークのマ

まず、野菜の種類を出来るだけたくさん思い浮かべてもらいたい。
スイカは野菜派の皆さん…は一回考えを改めてください。ここではスイカは果物です。
芋は野菜だからカロリーゼロ派の皆さんは正解です。芋は野菜カウントです。
きのこは…?きのこはしょうがないのできのこで一種類にしちゃいましょう。


一体何種類思い浮かびましたか?
ちなみにわたしは熟考して18種類でした。

さて、その中で「かぶ」は何番目に思い浮かんだでしょうか?
あるいは…あ〜出てこなかった〜ってところでしょうか?


推しマ、すなわち推しマークをわたしがつけるとしたら、かぶがいい。
かぶはわたしによく似合う。
まぁかぶの絵文字…ないんですけどね。


保育園生時代、自分のロッカーがどこか、自分の下駄箱がどこか、タオル掛けはどこか、などを示すのに、各人にマークがつけられていた。
わたしのくみはみんな野菜マークで、引っ越しがあって他の子より少し遅れて入ったわたしは、キャベツやにんじんのようにいつも冷蔵庫に入っている野菜ではなく、かぶマークが割り当てられた。ちなみに、わたしよりちょっと前に入った子は、ラディッシュだった。


くみで大きな顔をしていばってて意地悪してくる男の子は、キャベツマーク。なるほど古株だろう。
かわいくてバレエを習ってて優しい女の子は、にんじんマーク。こちらもおそらく初期組かしら。
それに比べて、かぶの馴染みの無さったら。かぶ農家さんごめんなさい。今では美味しくいただいてます。
くみには大体30人弱の子どもたち。30種類の野菜を考えなければならない先生の大変さも想像してあげてほしい。


というか、ラディッシュとかぶは、もはや輪郭が全く同じである。身の色が赤いか白いかの違い。
ちょっとはみ出している小さなかぶとわたし。なるほどお似合いである。
まだ出会ったことのないかぶは、きっと甘いに違いない、と思った。


卒園式で、わたしの前のラディッシュちゃんは「魔法使いになりたい」と言った。
自分が一番言いたかったことを言われたわたしはひそかに、(ラディッシュのくせに)と、彼女の無邪気さを恨んだ。
(ラディッシュ農家さんごめんなさい。
未だにラディッシュを食べた記憶がありません。)


そしてわたしたちは小学生になった。
小学1年生の通る道、『おおきなかぶ』。
かぶはわたしのマークだ。
でも、ここではほとんどの人が、そんなことは知らない。
国語でうんとこしょ、どっこいしょされるたび、ひとりむずがゆい気持ちでいた。


スーパーで初めて見たかぶは、想像よりうんと小さかった。全然うんとこしょ、どっこいしょするような代物じゃない。
わたしが小さいのを、大人たちは早生まれのせいだと思っていたが、学年が上がるにつれやがて下の学年の子に抜かされていくと、生まれの時期とか関係なくただ単に小さいのだと判明していった。
みんなが誕生日を祝われていくのを指をくわえて見て、学年のおわりにようやく誕生日を迎えるということは、とてつもなく重要で重大なことだったのである。

小さくて“みんな”から少しはみ出たかぶらしく、そんな意識がわたしを形づくったのかもしれない。

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