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戦争を考える 081 岡崎久彦!

外務省に勤めながら、数多くの著書を残した方で、まさにエリート。現在の現役職員にも、こうした八面六臂の活躍をされる人が出て欲しいのだが、受験秀才って、要は、失敗したくない思考が強すぎるし、責任回避症候群なので、難しいのかもしれない。キャリア組をエリートと呼ぶようだが、エリートって、知恵と勇気がないといけないはずではないのか。大失態を犯した某県警本部長は、何もなかったかのように、省庁の役職を巡るのだろうが、おそらく旧陸軍省と似たような体質に違いないと思っている。「自分の国を愛するということ」(平成11年発刊)から、幾つかを挙げておく。
やはり国際情勢は国と民族が基本ですから、国と民族の時代が終わったということはありません。(中略)アジアは、今まさにナショナリズムの時代です。タイだろうと、ベトナムだろうと、ビルマ、インドネシア、全部ナショナリズムです。特に中国がそうです。
結局は、中台問題は全部アメリカにかかっているのです。アメリカが助けてくれる気持ちがあるから台湾も独立を口にできるし、中国に反抗できる。(中略)アメリカの態度がすべての鍵なのです。
中国は二十一世紀は、日米同盟と中国との対決になると腹をくくったようです。
国家は経済では滅びません。戦前の昭和金融恐慌や、大不況の結果の農村の疲弊はひどかったのですが、日本はそれでも滅んでいません。アメリカと戦争したから滅んだのです。
ソ連との間で戦争が起こるとすれば、主要戦場はヨーロッパ大陸になると想定されました。日米安保条約は、最初から朝鮮半島と台湾海峡が目標でした。(中略)韓国と台湾海峡の安全を守ることは、すなわち日本の安全を守ることでもある、ということで合意したのが、佐藤・ニクソン共同声明の意味です。
大正デモクラシーは立派な民主主義で、しかも国会開設運動で日本が自分で手に入れた民主主義です。
アメリカが日英同盟を切らせたという印象が強いのですが、実は日英同盟を切ったのは幣原喜重郎です。アメリカが切れ、切れと言ったことは事実ですが、当時のイギリスは、アメリカが言ったからといって日英同盟を切らなければならない国ではありません。続けようと思えば続けられた。ところが幣原が切ってしまったのです。日英同盟を日英米仏の四ヵ国の協議だけの条約にしてしまった。あとの歴史で見る通り、こんなものは何の役にも立たなかったのです。
ごくごくわずかな紹介で恐縮ではあるが、誠に勉強になるではないか。「陸奥宗光とその時代」をはじめ、若い人たちが知っておくべき近現代の歴史書を多数残されている。謦咳に接することはかなわないが、その著作を通して、一人でも多くの皆さんが、先人のご努力に対して、深い敬意を表すべきではないかと考えるものである。写真は、すでに退役した?英海軍空母イラストリアス。

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