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【地域と共創するこれからの価値の設計〜コメダ珈琲店〜】

 コロナ禍で飲食店が苦境に陥り、営業を続けられない店が増える中、コメダ珈琲店は着実に店舗数を増やしている。コメダHD社長、臼井興胤の経営戦略が功を奏した。

▼オーナーは自分の店を自分で守る
 店舗のほとんどがフランチャイズで各店舗のオーナーの裁量が大きく影響するのがコメダ珈琲店の特徴だ。本部のマニュアルに依存するのではなく現場第一主義、きめ細かなサービスが行き届く。

 喫茶店は客一人当たりの滞在時間が長く、回転率が悪い。しかしコメダは一般的なフランチャイズとは異なり席数に応じた定額制で、売り上げが増えればその分オーナーが受け取れる仕組みになっている。
(一般的なフランチャイズは売り上げに応じたロイヤリティを本部に収める)

 つまり、オーナー自身が売り上げ向上に意欲的に取り組む設計がなされている。

 本部の仕事は美味しい原材料の選択やメニューの開発で、このメニューの中からどれを採用するかはオーナーに任されている。また、本部が各店舗に口出しをすることも少なく、オーナーは現場の売り上げ向上に集中できる。

▼地域と共創する時代
 コメダのメニューの価格帯は他のチェーンに比べると高めの設定がなされている。そのため、価格以上の価値を磨き上げないと客は集まらない。ストレスが多い時代の中での価値とは「くつろげる場所」であり、臼井氏はコメダのことを「街のリビングルーム」と表現する。

 コメダの発祥地・名古屋ではマクドナルドよりも店舗数が多い。同じ割合で増やせば全国に3,000店舗ほどできる計算になるが(マクドナルドは2021年6月時点で2928店)、臼井氏はそれを望まない。数より、地域に根ざした店舗を着実に増やすことを優先するためだ。

 経営の柱として「”くつろぎ”で人と地域、社会をつなぐ」ことを掲げ、地域のインフラとしての機能を果たすことを望んでいる。スターバックスなどライバルが多い業界ではあるが、「そもそものビジネスモデルが違うし、勝つか負けるかの対立軸で物事を捉える時代ではなくなっている」と臼井氏は語る。ライバル同士で競い、プレミアムをとる時代から、ライバル同士が同じ商圏の中でそれぞれの価値を磨き、提供し、共に地域・社会に貢献する「共創」の時代へと変わり始めている。

▼ホテルと地域共創
 では私が実際に勤めたいホテル業界はどうだろうか。ホテルは観光資源であり、地域の経済を活性化させる。そこには人が住み、彼らの生活がある。現地で何ができるか、必要かを的確に見極め、各ホテルや旅館、そして飲食店やレジャー施設まで、それぞれの価値を磨き、一つの観光地としての大きな価値を共に作ることが必要になる。パイを奪い合うのではなく、パイを増やし、共有することがこれからの新たな価値づくりだ。

(写真はコメダ珈琲店1号店の菊井店)

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