苦労したのでボツネタ冒頭公開
金曜日のショートショートの第11回(テーマ:鍵)は今までになく苦労した回でした。書いても書いても考えても考えても、なんか面白くない。全然納得のいく話にならなかったんです。
以前、ショートショートの作り方を「創作あれこれ」に書きましたが、今回もキーワードとか冒頭とか、ポイントを考えて結末決めずに書き進めるスタイルで進めていました。
普段はこれで書けるんです。がっつり書き直したり、途中でやめて別のものを書くこともありますが、たいていはそのまま書き進められるんです。
しかしそれが今回は全然で。いや、一応書き進められるけど、仕上がりに納得できないというか。
テーマのせいなのか、ショートショートを作るための知識等々のストックが枯渇しているのは定かではありませんが(前者であることを祈るけど)
途中から、耐久勝負のような感じで、ポイントを考える→書く→納得いかない→ポイントを考える→……って感じで繰り返してました。なんのトレーニングだよ、これはって本気で思いましたが。
というわけで、こんなに苦労したのだからタダでは転ばないぞ!と思いまして、ボツネタの冒頭を公開することにします。冒頭はどれもいかにもなショートショートっぽくて、こうやって並べるのはちょっと面白かったです。なんとなく自分の癖もわかりますね。
書いた順に番号振ってます。
題して……
『ボツネタ冒頭大公開
〜いや、書けるなら書きたかったさ!〜』
をお送りします。
①
僕は鍵っ子の最後の世代だった。というのも、僕が小学校を卒業した翌年から、小学生以下の子どもを一人にしてはいけないという今ではすっかりお馴染みの法律が施行されたからだ。それ以来、国の支援や補助もあり、ベビーシッターやナニーの仕事が随分と増えた。
②
「鍵がない」
自宅玄関の前でポケットに手を突っ込み、絶望する。
コンビニで買い物をした時に落としたか、いや、会社かもしれない。今日から好きな女優の瀧本アヤカの主演ドラマが始まるから急いでいたのだ。
コンビニに戻ってみるか、いや、警察に届けを出すべきか。そこまで考えて、鍵穴を見て、「あれ?」と思った。
──鍵が、開いている?
③
「家の鍵閉めたっけ?」
この心配に、これまでどれくらいの時間を使ったのだろうか。どうしても気になって帰宅することもあるから、相当なものだろう。
④
『大人になったら迎えに来て』
幼い頃、その言葉とともに初恋の女の子が鍵をくれた。家の鍵とはずいぶん異なるシンプルなもので、アクセサリーのような鍵だった。
引き出しの奥にしまってあったのを、就職のための引越しの準備の際に見つけたのだ。あんなに仲も良かったのに今までどうして忘れていたんだろう。思い出すと、どうしても彼女に会いたくなった。
⑤
ようやく合鍵をゲットした。ずっと片思いしていた相手と、話せるようになり、仲良くなり、そして彼の家の合鍵を貰った。嬉しすぎて、会う人全員に自慢して回りたいくらいだ。あの佐伯さんに合鍵を貰いました!と。
佐伯さんといえば眉目秀麗で仕事の成績も飛び抜けている人で、この会社で知らない人はいない。
⑥
老婆が路上で鍵を売っていた。たくさん並べられた鍵の横には「心の鍵売り〼」と書かれた紙が置かれている。怪しすぎるのに、何故か気になってしまったのは、意中の相手と最近仲良くなってきたからだ。もう一押し、というところまで来ていると思うが、その一押しがうまくいかない。
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ちなみに、①②は結末まで書いた上でのボツです。ここで金曜日の公開を諦めました。短いとはいえ、全ボツは勇気がいるし、心にダメージがありますね。
(だから漫画を読んで気分転換しました)
そして⑤から派生した作品が完成版「金曜日のショートショート11」ですね(全然違う話だけど)
ここに来るまで大変だった!
しかし、改めて完成版とボツ作を比べてみると、私は女性視点の方が書きやすいんだなぁとしみじみしました。今回ほぼ男性視点で書こうとしてたからうまくいかなかったのかもしれないです。
本当に、ショートショートは「思いつき」と「仕上げ」を鍛えるトレーニングだなと思いました。
次回も頑張ります。