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その8:誘惑続編 絵画小説 荒浪(2)

前置き
著作権が切れた文献を無料公開している「国立国会図書館デジタルコレクション」。10年以上以前、近代デジタルライブラリ—時代からウォッチしている私が、何の専門知識もなくご紹介しております。
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「誘惑続編 絵画小説 荒浪」千葉春村 大正7年
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/907136

前話はこちら。

ちょっとこの辺で登場人物を整理しておこうと思う。私のためにも。世界のためにも。

春田千代子…この物語の主人公。薄幸の美人。鉱山王に迫られている。トラブルメーカー。
春田信次…千代子の夫。稼ぎが少ない。千代子の異母妹夫婦の口車に乗り欧州へ追いやられてしまう。確か英国文学を研究しに留学したはずなのに、なぜか現在は英軍従軍記者。
多澤俊子…千代子の異母妹。セレブ妻。
多澤勇助…俊子の夫。貿易会社社長。第二の鉱山王の座を狙っている。
鉱山王・戸塚常太郎…美人の千代子を一目で気に入り、後妻に迎え入れたいと考えている。私ならホイホイ行くね。

咲子…千代子の女学校時代からの親友。千代子に良かれと思ってやることなすこと裏目に出るこちらもトラブルメーカー。
川瀬國方…日本画の大家で咲子の師匠。千代子をかくまってくれる。
川瀬春方…國方の息子で日本画家。千代子を気に入っている様子。
爺や…多澤の家に仕える下男。千代子の理解者であり、千代子をたびたび助けてくれる、根拠のない自信家。
立花…多澤家の書生。

では前回の続きを見ていきましょう。
こっちはね、今更やめるわけにはいかないんだよ!

あ。夢でした。(よくあるやつ!よくあるやつ!)
だけどなんだか千代子胸騒ぎ。夫に何かあったのかしらん。

千代子、色々あって咲子を送って出た矢先(だから何でこの人は軽率に外に出るのか)、号外を手にする。そこにはなんと、イギリス軍偵察機が墜落し、春田なにがしとやら日本人も1名乗っていたというではないか!すわ、あれはやはり正夢なのか!そう!千代子の名字は春田だからね!確認作業!
ショックのあまり、呆然自失で彷徨う千代子。だから何でこの人は軽率に(略)

その頃、千代子探しに躍起になっている多澤夫妻。千代子に懸賞金をかけて探すことに。
しばらく炭鉱王が出てきてないんだけど、ちなみに炭鉱王が千代子にこだわっていたのは美人であるのはもちろんのこと、「素人」だから。いいね炭鉱王!そのゲスさ加減、裏切らないね!そろそろ出てきてよ!

呆然としながら歩いていて電車に轢かれそうになっているところを助けられる千代子。つくづく迷惑な人である。助けてくれた親切な方、しかし「あれ?この人、尋ね人の人じゃない?」と、多澤夫妻に連絡してしまう。そうそう、それでいいんだよ。私は一体誰目線で読んでいるんだろう。

連絡を受けた多澤にまんまと捕らわれてしまう千代子。しかし、多澤家へ連れて行かれそうになったその時!!!なんと、多澤と千代子が乗った車が交通事故を起こしてしまったのだ!これはもう、千代子が疫病神としか思えないね!

混乱に乗じてこっそり逃げ出した千代子(前話「誘惑」の火事のシーンを思い出すよね!)、慌てて車をつかまえて、桜木町へ向かってくれと言うものの、なんだかよくわかんない家に連れてこられて奥座敷に幽閉されちゃった!なんだこの強引な展開は!今更ですね!そうですね!
車夫「あの玉なら三百両は確かなもんだ」
そう。ここは人買いの家!(唐突!!!)美しい千代子に目を付けて、商いにするつもりなのだ!江戸時代、吉原の上玉でも身請けが二十両もしなかったそうなので、三百両ってのはすごい額だわ。こんな上玉がなぜ鉱山王と出会う前は貧乏で苦労していたのか。なぜちょいちょい就職試験に落ちたのか。よほどのお馬鹿さんにちがいない。そうだといい。そうだといいな!

一方、千代子の夫、信次はしぶとく生きていた。飛行機は墜落したものの、唯一ひとりだけ助かったのだ!この男も大概である。
そして倫敦の病院に収容されているのだが、いまだ意識混濁状態で、たまに「chiyoko…」と繰り返すだけなのだ。

信次の容態なかなか回復しないものの、そんな中で信次が契約していたヘラルド社の社長令嬢フローラが、東亜の紳士・信次にご執心のご様子。信次の回復を願って毎日祈り、信次の治療費を賄うためにチャリティコンサートまで開いちゃう始末。
もうさ、信次は信次でよろしくやってるからさ、千代子も好きにすればいんじゃないかな!

「荒浪」編、「誘惑」編よりとんだおもしろさですね!!!
多分最後はおさまるとこにおさまるんだろうけどな!!!
次号を待て!!!

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