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野宿させろ!横浜一揆(野宿してもええじゃないかデモ) - 2020年8月9日(日)/神奈川県横浜市

2020年8月9日(日)、神奈川県横浜市中区で行なわれた『野宿をさせろ!横浜一揆』の記録

 一揆と称した人々が自作のお神輿を担ぎながら「野宿してもええじゃないか」と叫び踊りながら、横浜みなとみらいを練り歩いた。「横浜には騒ぎが必要だ!もっと路上で遊ばせろ!」という考えのもと抗議デモを行ってきた「横浜一揆」としては、5回目の横浜デモだ。
 今回は「野宿者排除反対!野宿させろ!」ということで、みなとみらい線・馬車道駅コンコースに貼られたホームレスを排除する趣旨の張り紙に抗議するデモが行われた。抗議対象は、みなとみらい線を経営する横浜高速鉄道、および株主の横浜市だ。社会的弱者の排除は人権問題であるということは決して忘れてはならない。

【動画】

野宿をさせろ!横浜一揆(野宿してもええじゃないかデモ) - 2020.8.9(7分32秒)


【写真】

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[馬車道駅の張り紙]
 みなとみらい線・馬車道駅コンコースには「駅構内で、新聞紙や段ボール、私物等を置いて居座ることは、駅をご利用されるお客さまへのご迷惑となりますのでおやめください。」という張り紙が貼られている。
 2020年6月中旬にみなとみらい線を運営する横浜高速鉄道株式会社が、行き場を失い駅に滞在している人々に向けて「お願い」という形で掲示した。
 この張り紙は、かなり広範囲に貼られていて写真で伝えるのは難しいので、上にあるデモ動画の最後の部分をみて欲しい。そこにあるように、かなり執拗に貼られている。


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 張り紙が貼られたのと同じ頃、馬車道駅直結の複合施設がオープンした。商業施設、文化施設、高級宿泊施設や分譲マンションが入っている、大きなビルができた。また、新しく移ってきた横浜市役所の最寄駅が馬車道駅になり、横浜市職員が毎日利用するようになった。
 これらの事柄と馬車道駅にホームレス排除の張り紙が貼られたことが関係ないはずがない。

 私が馬車道で張り紙を撮影した際、話を伺うことができたホームレスの男性(70歳)は、「近くに簡易宿泊施設もあるがコロナが心配なのでソーシャルディスタンスが取れるここにいる」と言っていた。また、「オリンピックが延期されたしコロナで観光客が少ないから今年はどうにかこうにか、ここにいさせてもらっているが来年はどうかわからない」とも言っていた。
 コンコースには閉鎖時間があって、駅が閉まっている間は利用することができない。始発から終電の間だけではあるが、野宿者が一時的に体を休める場所になっている。


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 横浜高速鉄道の株主である横浜市は、人権尊重をまず第一に考え、社会的弱者の排除の動きを積極的に止めることが責務であるはずだ。


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 夕刻、関内駅南口にある大通り公園の石の広場に集まり、デモの出発準備をする参加者たち。8月は日没までの時間が長く、午後6時を過ぎているというのにまだまだ明るかった。
 過去に出発時間を大幅にオーバーしたことが何度もあり、今ではこのデモには出発時間厳守が義務付けられている。複数の警察署の管轄を跨ぐデモの場合、コース最後の方の警察署は待ちぼうけしてしまう。


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 伊勢佐木警察署の警備課員は署が近いので徒歩で現れた。左腕に青色の腕章をしているのは、直轄警察隊(関東管区機動隊)の隊員だ。
 直轄警察隊というのは、神奈川県内に54ある警察署のうち警察事象の多い15警察署の警備課に置かれている、弾力的かつ効果的な運用のための人員だ。普段は警察署で業務をこなし、大規模警備や大災害が発生した時に自治体という枠を越え全国的な活動を管区機動隊員として行う。


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 お神輿を先頭にしたデモ隊は、関内駅南口にある大通り公園(石の広場)を出発し、横浜スタジアム前〜横浜市中区役所前〜中華街東門前〜横浜高速鉄道本社前〜山下公園まで、約2.6kmのコースを行進した。


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 自作のお神輿に乗るコケシのような赤い物体は、「ネブクロさん」という寝袋で寝ている人を象った野宿のキャラクターだという。段ボールと新聞紙で出来ているそうだ。
 第1回と第2回の横浜デモでは、本物のお神輿を担いでデモを行っていたが重過ぎて3回目以降のデモでは姿を消していた。そもそもこのデモの起こりは、「お神輿を手に入れたのでお祭りがしたい」ということで始まったはずだったが。
 担ぎ手も少ないので、軽量なお神輿(のようなもの)を今回のために自作してしまった。ここにきて原点復帰をしたが、デモが終わった後にイベントでお神輿は燃やしてしまったそうだ。


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 私は警察官の装備品が気になってしまい、ちょっとカッコいい私物ギアを見つけるとそれが何なのか調べずにはいられない。タグを含めたその色使いが目に焼きついた。
 このグローブは「TREVENTO TVC-201」という一般的な作業用手袋だった。人工皮革なので安価で入手でき、気兼ねなく使える。正に働く人のためのアイテムだ。
 黒や紺や白という単色の手袋を着用している警察官が多い中、このように少し主張するデザインの物を身につけている場合もある。デモ隊を追いながら警察官の私物も全て観察しているので、デモ撮影は大変なのだ。


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 みなとみらい線の終着駅「元町・中華街駅」元町口のビル2階に横浜高速鉄道株式会社の本社がある。今回のデモは本社前での抗議が目当てだったと言っても過言ではない。


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 横浜一揆が行っている横浜デモは、抗議を行う一方で路上解放を訴えるアクションでもある。新型コロナウィルス感染拡大の影響で、ますます自由が制限される社会になってしまったが、自由は少しずつでも取り戻していかなければならない。


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 デモ終了後、参加者の一部は野宿をしたそうだ。前回も前々回のデモの後も野宿をしていたという。横浜一揆のコアメンバーには、野宿愛好家として知られる、かとうちあき氏がいる。彼女は『野宿入門』など、野宿に関する著書もあり、馬車道駅の張り紙に怒りを覚えたそうだ。
 そんな野宿と親和性の高い横浜一揆が、野宿者排除に抗議するのは必然だったと言えよう。こうして「野宿してもええじゃないかデモ」は行われ、この日も野宿が行われたのだった。

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