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七夕、蝉の声に気づく

職場を出る。
べたべたと注意書が貼られたドアの外は、むあっと蒸し暑くて、今日も風が強い。

台風みたいだねぇ、とこないだから何回めかの言葉をつぶやいて歩きだす。マスクを外してバッグにしまう。

唇と頬に、風が気持ちいい。すこしだけ涼しい。雨があがって、緑がいきいきして見える。

あ、蝉の声だ。

昨日は聞こえなかったのに。
昨夜から雨だったのに、蝉達は土から出てきたんだろうか。それとも成虫になってから、雨のうちは静かにしていたんだろうか。
もしかしたら、流されたりした蝉もいたかもしれない。すごい雨だったから。

蝉の声を聞くと、夏がやっと始まるみたい。
ちいさい頃は大きな雷が鳴って、梅雨が開けたら夏だった。

小学生の頃、夏休み前日はわくわくそわそわする感じがあった。教室で帰りの会が終わるのも待ち遠しくて。教室全体がそわそわした雰囲気に包まれていた。「みなさん、さようなら。」の挨拶で、絵の具箱やら体操服袋やらたくさん持って教室を飛び出した。

なんだったんだろう。あのわくわく感。
小学生の間だけで、消えてしまったけど。

今もこの季節は、なつかしくなる。

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