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2002年からの武術エッセイ

ボクシングなどで、なにげなくチョコンと出したパンチがあたって、相手がダウンしてしまう。
本人にしてみれば、相手を打ったという感覚もない。
あるいは、当てようとすら思っていなかったかもしれない。

これをいわゆる「ラッキーパンチ」と言います。
逆にパンチ力に自信のあるボクサーが一発K・Oを狙って、パンチをふりまわす。
当たらない。当たっても相手はダウンしない。
パンチ力があると評判になって恐れられてきた頃のボクサーは、意外と苦戦するものだ。

前者は、無意識のパンチで、後者は、強い意識のパンチだ。

相手を倒そうとすればするほど、自慢のパンチ力は火を噴かない。
無心になればいいのだ!なんて、そんなお題目は効き目がない。

もっと、あらかじめ「無心」というものを技術的に解明しておかなければならない。
ボクシングで言えば、「ラッキーパンチ」のメカニズムを解明しておかなければならないのだ。
「ラッキーパンチ」を打ったときに手ごたえを感じないのはなぜか?
人間は、殴られたり、自分の身体に急激な力が加わると、反射的にその部分の筋肉に力をいれてしまう。これは、人間の筋肉や神経の習性のようなものだと思う。
逆に力を加えた者は、手ごたえを感じるのが普通なのだ。
しかし、「ラッキーパンチ」を打ったボクサーは、手ごたえを感じない。
つまり、相手の筋肉は打たれたときに力が入らなかった、つまり筋肉が反応しなかったためだと考えられる。

つまり、「ラッキーパンチ」という技術は、相手の身体の筋肉に反応をおこさせない技術なのだ。
つまり、相手の筋肉の反射の裏側にもぐりこんでいく技術ということだ。

武術において、小さい者が大きい者を投げるというのは、何の不思議なことではない。
大きい者が自分の体重を操れないようにし、力を出せないようにすればいいのだ。
つまり、「ラッキーパンチ」と同じように、相手の筋肉の反射を麻痺させるような、反射神経の裏側にもぐりこんでいく技術を使えばいい。
こうやって、投げられた相手はきまってこう言う。
「油断した。ちくしょ~~~~っ!」

また、武術の突き蹴りにおいても同じ。
この技術を使えば、相手を吹っ飛ばしたり、身体のなかにめりこませたりすることも可能だ。
こうやって打たれた相手は、きまってこう言う。
「しまった、油断した~~~!」

武術とういものは、こういった技術の集積であり、そういった技術を伝え、養成していくのが「型」というシステムだ。
「型」こそが、「ラッキーパンチ」を自在に操れる能力を開発する「ラッキーパンチ養成ギブス」なのだ!

2005年2月記す。

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