旅、音楽、言葉、料理… 生活とその延長線上にあるものとか

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  • フローの旅

    旅の記録です。

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浪人生だった頃

およそ半年ぶりに通る住み慣れた街の見慣れた路地は、朝8時前だというのに既に盛夏の熱気にやられて陽炎が揺れていた。実家から歩きで15分ほどの所にある祖父母の家に、いま、ちょうど近くのバス停から向かっている。 夜行バスを降りたのが午前6時30分、リクライニングのろくに効かない車内ではまどろむくらいが精一杯で、眠気を一足一足噛みしめながら坂を上る。 帰省、家族に会うのは楽しみで、でもなぜだか少し照れくさいような顔が火照るようなそんな感じ。多分、嬉しいという感情が素直に翻訳されて

    • フローの旅 第三章<岩手>下

      ※こちらは一年前にnoteに上げていたものの続編です。 十一日目 宮古‐大船渡昨日に続きヒッチハイク。明け方からずっと風が強い。飛ばされそうになりながら国道に立ち、手には釜石と書いたノート。 途中鵜住居という地区に立ち寄る。津波が全て流した場所に今は津波伝承館やラグビースタジアムが建っている。 大風にあおられながら巡っていく。 この旅行で震災の記憶を見てみたかった。僕の中で3.11はテレビ画面や新聞上のことでしかなく、あくまで伝聞調のものだった。故に昨年、福島の帰還困難

      • フローの旅 第三章<岩手>上

        ※この旅行記は一年前にnoteに上げていたものの続編です。下書きを発掘いたしまして、文章はすべて当時のままです。どこにも行けない状況が続きますが、少しでも風が吹きますように。 九日目 角の浜‐久慈早くに発ち国道45線を南へ進む。晴れ空の下砂塵を巻き上げトラックが行き交う。正面に「復興道路」の文字をつけて。八戸から仙台まで三陸海岸地域を結ぶ自動車道を造っているらしい。 気づけば道々に「過去の津波浸水区間」などという標識が現れ、少しずつ震災の痕跡を感じるようになる。 岩手の

        • フローの旅 第二章<青森>下

          七日目 狩場沢‐八戸物凄い雪が降った。15㎝はあるだろうか。辺りは一面モノクロと化し、歩道はもうすっかりと重い雪に覆われて、一歩進むのでさえ骨が折れる。 ましてや薄いスニーカーの四方より溶けた水の入り来るははた言ふべきにもあらぬほどにいとわろし。 やっとの思いで野辺地町のスーパーに入り、暫し休息。今日はどうも進めそうにない。 歩きは無理だと知ったので、ここからヒッチハイクに切り替える。再び雪の車道に立ち親指を前に。どうかこの哀れな旅人を乗せて給う。 というところで、営業

        浪人生だった頃

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        • フローの旅
          6本

        記事

          フローの旅 第二章<青森>上

          五日目 函館‐青森函館を午後2時に発つ。青函連絡船はだいぶ空いていて快適だ。冷たい潮風を浴びながら港の岸壁を見ていた。 いよいよ本州へ。一日休んで足の痛みもだいぶ引いてくれたようだ。 ちなみに朝食は函館朝市、茶夢での海鮮丼。四日間歩いてきたと話すと小鉢やら刺身やらいろいろとサービスしてくださった。「いっぱい食べてここからも頑張って」と励まして頂き、心身ともに力が湧く。どうもありがとうございました。 津軽海峡と言って思い浮かぶのは演歌界の名曲中の名曲、石川さゆりは「津軽海峡

          フローの旅 第二章<青森>上

          フローの旅 第一章<北海道>

          一日目 豊浦-長万部 朝7時、少し靄の残る豊浦町を発つ。持ち物は最低限の着替えと食料、寝具だけリュックに詰めて。道沿いの線路に向こうから列車がやってきた。ストックを突いて進み始める。曇り空に胸を高鳴らせる。 これが旅に出るということだ。 3月、路面の雪は溶けて、野や山肌を少し覆うのみ。数年前に歩いた道を今度は一人で辿っていく。噴火湾を南へと。道端の熊笹はもう心なしか春の色合い。 トンネルを歩くということ。遠くより来る車、トラックらの響かせる轟音、反響して迫ってきては遠ざ

          フローの旅 第一章<北海道>

          フローの旅 序章

          少し前まで旅をしていた。北海道を発ってから東北、関東、果ては名古屋まで。歩き、列車に乗り、船、そしてヒッチハイク。春を手繰るように南へ南へと向かい、一月が流れた。 その記憶のみずみずしいうちにここに記しておく。 旅はナマモノだ。  時とともに味が大きく変わっていく。たとえ旅の途中でも、昨日見たものが違く見えたり、印象が全く異なるときがよくある。ましてやこうして幾日も経ったなか微かに覚えたことを書き出したとしても、その時感じたことのいくらを一体出せるのだろうか。 だからこの

          フローの旅 序章

          開始

          噂のnote始めてみました。そんなに筆まめでもないんですが、最近書くことの重要性に目覚めたのでたまに更新していくと思います。 思ったこと、旅のこと、音楽のこと、自分のこと。ゆるゆるとやってきたいです。 どうぞよしなに。