暴食魔王VS光魔王
(バリュート視点)
ここは、魔王領最奥部。
そこにて、バリュートたちは、戦いーーーといっても、一方的な虐殺をしていた。
最奥部というだけあって、出てくるモンスターは、全てSSランク以上。
それでも弱い。
空気にすら値しない。
なぜって、こっちには、
「フハハァ!私は君たちを束ねる魔王だぞ!?
君たちが勝てるはずがない。おとなしく跪け!」
とても魔王とは思えない、魔王がいるからだ。
槍をブンブン振り回しながら、モンスターたちの体を切り裂く。
頼もしすぎるな。
一応、レイブの新しいスキル「百鬼夜行」でも戦ってもらっているが、かっこよくしたいらしいので、前衛魔王、百鬼夜行、レイブ、中衛カルハ、アンライ、後衛俺、巨大カラスで、全員が戦っている。
俺が恒星雨を降らせたら、辺りのモンスターが死んでいく。
逃げようとするモンスターも、魔王とレイブが仕留めてくれた。
遠くの敵は、カルハのブレスで全部死んだ。
おかげで、経験値がどんどん貯まる。
だが、経験値は温存したいと思う。
ありえないけど、魔王が復活して、俺たちを狙った時、魔法攻撃無効とか、物理攻撃無効とか、取得したら助かるしね。
結構強いパーティーになってきたんじゃないのか。
SSランクモンスターは瞬殺、フェンリルだって討伐したことがある。
あれ、もう最強なんじゃない?今なら、魔王もイチコロだ。
ん?なんだ、あれは。
水、のようだけど、表面を触ってみると、ベタベタする。
その瞬間、俺の右手が、消えた。
「ご主人様⁉︎大丈夫ですか⁉︎『超再生』」
魔王が治してくれたが、まだ痛い。
それにしても、コイツはなんなんだ?
その正体を表してくれる魔王が発した言葉に、少し驚いた。
「おい、何をする!暴食魔王!」
どうやら、このスライムみたいな生命体は、魔王だったらしい。
でも、あんまり驚かないかも。
最近、魔王とかフェンリルとかに会ってるしね。
「★そうだよぉ!僕は暴食魔王グラトニースライムだぁ。にしても君ぃ、魔力が美味しいよぉ。おかげであと1000年は食べなくてもよさそうだぁ。★」
暴食魔より1ランク上の魔王の!?
こんなギャルみたいな魔王がいたの?!
最近、イメージ崩すようなキャラがいすぎじゃない?
「おい、ご主人様に何をする。」
「★ただ右腕を食べただけだよぉ。そうだよねぇ。★」
「おいゴラ決闘だ!○す!」
「★下劣な言葉のせいでP音入ったじゃないかぁ。いいよぉ。賭ける物は君の心臓でいいよねぇ。★」
ちょ待てよ!
なんで勝手に俺の心臓賭けとんねん!
心臓ともなれば俺、死ぬぞ?!
しかたない。
レイブさんに対象を魔王にして、最硬の鱗をかけてもらい、和風の美味い餅(効果あり。この美味さで寿命延長とか、神。)を食べ、魔王にいくつか餅を持たせておく。
これでOK。
「試合、開始!」
試合が始まった。両者とも、スキルを発動する。
「喰らい尽き。」
「月下の生命。」
刹那、空中に大きな口ができ、光でできた動物たちが現れる。
「屍喰鬼。」
「大天使。」
次は、生命を召喚した。
暴食魔王はグール、光魔王はウリエル。
まあ、どう考えても天使の方が強いので、グールは一瞬で押し負けた。
「暴喰。」
「天罰。」
「魂喰。」
「聖廻。」
「喰焔。」
「天冰。」
このスキルで、やっと決着がついた。
勝ったのはーーー暴食魔王の方だ。死んだ。やっべ。
「魔喰。」
魔力が、喰われた。
▶︎魔力がゼロになりました。
▶︎魔力がゼロになったため、魔力枯渇になりま
す。
ああ。頭がふらふらしてきた。
暴食魔王が近づいてくる。
あれ?頭痛が、治った?
「★そうだよぉ。僕の魔力を分け与えたんだよぉ。感謝してねぇ。★」
えっ!その行動になんの意味があるの?ていうか魔力って、人に分けられるの?
「★そこからかぁ。魔力っていうのはぁ、燃料なんだよぉ。魔道列車だってぇ、魔石を入れないと動かないだろぉ。でもぉ、一回きりしか外部から入れられないなんてぇ、不便利でしょぉ。魔力もそれと同じぃ。だからぁ、他人に分け与えられるのも当たり前だろぉ。★」
うん?全く分からない。
でも、助かったから、ありがとう。
魔王領のボスを倒すぞ!というわけで、俺らはボス部屋(?)に向かった。
(魔の王視点)
愚かだ。実に、愚かだ。
この我を、人間たちの「王」が倒せると思うな。
人間の「王」は、「実力」でなく、「経済力」などという、人間の間でしか使えない力を持っている。
「実力」があれば、この弱肉強食の世界、全て制覇できるというのに。
かつて、勇者などと大層な名を持った者が来たが、我の力を分からず、野垂れ死んだ。
人間たちは「勇者と魔の者は相打ちになった。」などと、戯言を言っていた。
まあ、「最強種」なら、十撃くらいで死にそうだったが、我は一撃で殺れる者を待っておるのだ。
小さな種族の人間の王に、全ての魔を束ねるこの魔の王が、負けるはずがない。
他にも、妖精王や、竜王などの強き王はいるが、まあ我には勝てんだろう。
“不老不死”だから。
“正体不明”だから。
全ては、魔神マギリャ様のため。
おや、向こうから何も知らない小童が来たようだ。
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