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【連続note小説】日向食堂 小日向真司2歳

ようやく片言だが真司は言葉を覚えてきた。
最初に話した単語は「おちゃ」だった。
この頃から文枝は母乳を卒業させて、お茶を飲んでいた。
文枝が「お茶を沸かさないと~」、「真司、お茶を飲みなさい」と毎日のように連呼していたから、自然とその言葉を覚えてしまったのだろう。
何を最初に話してくれるのだろうかと期待していた誠司と文枝は、さすがに感動が薄まってしまった。
 
日曜日になると三人でよく散歩に出かけた。
この当時は自家用車を持っているのは一部の金持ちだけで、一般家庭には高嶺の花だった。
ちなみに誠司の通勤も、文枝の買い物も自転車が活躍していた。
だから遠出することはめったになかった。
 
歩いて出掛ける先は、もっぱら近所の公園や河川敷。
よちよち歩きの真司の右手を誠司が、左手を文枝が握って三人は並んで歩いた。
それでも三人は幸せだった。
 
真司は代わる代わる誠司と文枝の顔を見上げた。
見つめ返してくる両親の顔は満面の笑顔だった。
この頃からだろうか。
真司が両親を笑顔にすることが、自分の使命のように思い出したのは・・・。


真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。

<続く……>

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