【連続note小説】日向食堂 小日向真司41歳
ある日のこと、家族連れが晩御飯を食べに日向食堂にやって来た。
お父さん、お母さんと小学生くらいの男の子だ。
いかにも普通の幸せそうな家族に見えた
三人はそれぞれに好きなメニューを真司に注文した。
真司は手際よく料理し、三人分をほとんど同時に提供した。
お父さんはビールを1本だけ注文し、それを美味しそうに飲んでいた。
三人は楽しそうに会話をしていた。
男の子はハンバーグ定食を注文し、美味しそうにそれを平らげた。
それなのに男の子はしくしくと泣き出した。
「どうしたの、お腹でも痛いの?」
母親は心配そうに男の子に聞いた。
真司も心配になって近寄って来た。
「どうしたんだ、ちゃんと言わないとわからないよ」
今度は父親が涙の理由を聞いた。
「料理が美味しくて、涙が出てきた」
「えっ、それは何だかお母さん、複雑」
母親は苦笑い。
「そんなに美味かったのか、よかったなぁ」
父親は男の子の頭を撫でた。
「いや、料理が悪かったのかと肝を冷やしましたよ」
真司は自分の胸を撫で下ろした。
香川吾郎、このときまだ10歳だった。
<続く…>
<前回のお話はこちら>
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