【連載小説】小五郎は逃げない 第19話
幾松の行方 2/3「頼むきに縄をつかむぜよ」
以蔵は祈るように縄を握りしめた。すると縄を介してすごい力で引っ張られ、危うく以蔵は欄干を飛び変えて川の中へ放り出されそうになった。以蔵は持てる力を振り絞って、片足で欄干を突っ撥ねるようにして、その引力に抗った。しかし、引力が強すぎて身動きが取れない。このままでは桂の息が持たないか、以蔵が川に引っ張り込まれて共倒れになる。そう思った以蔵は、縄を引っ張りながら少しずつ橋の袂へと移動し、岸へ降りるとすぐに縄を手繰り寄せた。濁流で何も見