【連載小説】小五郎は逃げない 第32話
決別 3/3 子供の頃はよく友達にいじめられていた。しかし、悔しくて泣いた記憶などなかった。剣術を始めてから誰にも負けたことがなかったが、龍馬に始めて試合で負けた時も悔し涙など流すことはなかった。池田屋で新選組の襲撃を受け、仲間を置いて逃げた時に、走りながら泣いていた気がする。友が死に行く姿を思い浮かべると、意識することなく泣いていた気がする。自分が苦しくとも、辛くとも泣くことはなかった。しかし、親愛なる友の苦しみには耐えきれない、耐えきれずに涙してしまう。桂はそういう男だっ