36歳から歯列矯正をする話②〜矯正治療から逃げていた私

矯正治療を勧められたのは30をすぎた頃だった。
大して調べもせずに行った歯科が思いのほか熱心に話を聞いてくれ、具体的な提案をしてくれたからだ。

永久歯が足りないことはずっと分かっていたので、一応、今までにかかったどの歯科でもブリッジか入れ歯か、くらいの提案はされていたけれども、ブリッジは付けるために健康な歯を削らなければならないし、永久歯がちゃんと生えてるところもあるのに入れ歯なんて入らなくない??って感じで、全く心に響かなかった。
途中やけになって、じゃあもう入れ歯にします!!!って言ったこともあった。
自分の歯だからちゃんと向き合わなければならないのだけど、何でみんな普通に歯があるのに、私にはないんだろう、本来なら不要な悩みなのに…という理不尽感しかなくて、なかなか本気で向き合う気になれなかった。


30歳の頃、今の家がある地域に引っ越してきて、相変わらず目の前にある歯の問題を抱えたまま、とある歯医者に何の気なしに通うようになった。
ちょうど、乳歯の前歯がぐらついてきたりしてきた頃で、私の不安はMAXだった。
私は先生にものを噛めないこと、見た目が気になること、でもどうしたらいいかわからないことをつらつらと吐露した。
この歯科はインプラント治療に力を入れているので、足りないところにインプラント入れるのがベストですかねぇ、と言っていた。
でも、足りないところを順番に補うだけじゃ駄目なんですよ、とも言った。
今ある歯を正しい位置に並べて、改めてどこに何を足すかを考えないといけない、その為にはインプラント以前に矯正をする必要があります、と。
これは初めての提案だった。
そして、矯正歯科のパンフレットをもらって、カウンセリングだけでも行くように、と勧められた。
パンフレットを見ると、大人の矯正70〜90万円、と書いてある。
検査費用5万円、とも書いてある。
治療に通う度に、「矯正歯科行ってみましたか?」と聞かれる。
私はばっくれた。
その時の私は歯以外に色んな問題を抱えていて、お金もないし歯医者に通う時間もなかった。
もう何度繰り返したかわからない逃避だった。

そして6年後、やっと重い腰を上げることになる。

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