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 今日までずっと一緒にいた。
 明日もずっと一緒だった。

 今日は特別な日だと、私たちが決めたのは4か月も前のこと。それは純情というには色あせていて、青春というには遅いものだった。だけど、私たちには特別な日。
 私とあなたの間には何年もの時間がずれていて、それはこの先ずっと追いつけないし、追い越せないでしょう。それでも、私はあなたの心に追いつきたいと思うのです。並んで歩きたいと思うのです。この時間の差は私とあなたとの心の差にはしたくないのです。
「素敵だよ」
 と、子供じみてあなたは照れ臭そうに言った。私はあなたよりも子供じみて、目を見たまま何も言えずに……うつむいた。それでも、あなたに言いたいことが伝わるというのは何とも不思議で、今までにないことだったのです。

 あなたとの体験は私の今までのどの体験よりも、淡い色で染まっていて、決して黒くはならないのです。嘘です。黒くなった時もありました。人間ですもの。少しくらい、悪いことを想わせてください。でもその黒は、あなたの出した色と中和して、だんだんと色を付け、淡い色に染まっていくのです。
「もしも。このさき、どこかへ行くようなことがあったら、きみもどこかへ行くんだよ。絶対にここに残ってはだめだよ」

 あなたのその言葉に、うなずけない私がいましたが、私はうなずきました。うなずくことしかできませんでした。でも、それでもあなたはまだここにいます。私と一緒の空間を歩いているのです。私は、そんな日々がうれしくてたまりません。うれしくてたまらないのです。

 今日もあなたと一緒の空間は。私たちの色が交わっているときはまだ、一緒の空間を。私たちの色が黒くなってしまうまでは、一緒の空間に私たちのどちらかの色が消えるまでは、一緒の空間の。私たちの色が変わってしまうその時も、一緒の空間で。
私はそう願っているのです。

 私たちは明日もずっと一緒だった。

2019/04/28(日) 

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