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愛も、法も、嘘がすき。

私の大好きなドラマに「リーガル・ハイ」があります。
弁護士ドラマで、堺雅人さん(以下堺さん)新垣結衣さん(以下ガッキー)主演で、2012年のドラマですから、ちょっと古いドラマになってしまいますが、毎週楽しみに見ていたものです。

ドラマは、ガッキー紛する、駆け出しの弁護士・黛さんがとある殺人事件に敗訴し、控訴しようと奔走するところから始まります。

黛さんは、なんとか被告である坪倉くんという若い青年を助けたいと、判例集を片手に、電車の中でも勉強し、とにかく必死です。

その電車の中で、お年寄りを押しのけて座った、一人の男性と出会います。
正義漢の塊のような黛さんは当然、その光景にムっとし、男性に「席を譲って差し上げてはいかがですか?」と声をかけますが、男性は「私は年齢が38だが、貴女は私が重度の心臓病を患っていることを少しでも考慮しましたか?」と屁理屈をこねだし、あれこれと屁理屈を並べ、黛さんを論破、煙にまいて、黛さんを追い払います。

黛さんはあくまで、坪倉くんを助けたい、控訴すると、所属事務所である三木事務所のボス、三木さんに直訴しますが、三木さんとしては負けたのだし、黛さんには企業法務のエキスパート、海外の企業法務をやってもらう方針らしく、三木さんはそんな事件はもう放っておけと言いたかったようです。

三木さんの秘書である沢地さんから「三木に処分される覚悟はおありですか?」とこっそり耳打ちされ、ある弁護士を紹介されます。

その弁護士を訪ねると、おおよそ弁護士事務所というイメージとはかけ離れた大豪邸で、迎え出たのは事務員の服部さんで、その弁護士は電車で屁理屈をこねた男。優雅にバイオリンなど弾いており(正しくは弾くフリ、CDを流していました)お目当ての女性が訪れるのを待っていました。

その弁護士は、黛さんに対して露骨に嫌な顔をし、三木事務所の者だと名乗ったとたん「服部さん、私は留守です、お引き取り願って」と、黛さんの名刺を放り投げ、お目当て女性の来訪に目の色を変え、服部さんの用意した豪華な食事を始めます。

弁護士の名は古美門研介、無敗の弁護士として有名、腕は抜群だが性格、人格に大変な問題があり、毒舌家で皮肉屋、誰に対しても態度が横柄で、恐ろしく弁が立ち、頭の回転も速く、口も達者、恐ろしい早口でまくし立てるような話し方で、口も悪く、加えて偏屈であり、誰も敵いません。

もとは黛さんと同じ三木事務所の所属で、人を喰ったような態度を面白がった三木さんが雇い、以後、三木事務所のエースになりました。お金になりそうな案件を見つけてきては、強引に訴訟にもってゆき、連戦連勝、無敗記録は破られておらず、やがて三木さんの手にも負えなくなり、とある事件で2人は決裂、三木事務所を辞めたあとも、古美門さんを顧問弁護士として雇いたい企業はたくさんあり、法外な顧問料で悠々自適な暮らしをして、毎日、服部さんの豪華な手料理に舌鼓を打ち(服部さんは昔、スイスのホテルで料理長をしていた経験あり)身の周りの世話は全て服部さんにやらせ、弁護士としては一線を退いている形でした。ちなみに女好きでスケベです(笑)

それでも黛さんは食い下がりますが、古美門さんが提示してきた金額は「着手金が1000万、報酬金が2000万、それが私の弁護士費用」と。「安いくらいだよ、私が引き受ければ必ず勝つのだから」とへらへら笑いながら黛さんにそう告げます。

古美門さんは「君のようなポンコツ弁護士がこれ以上増えたらこの国の司法はいよいよ終わりだ、正義は金で買える、金を持ってこい!」と早口でまくしたて、終いには「それ以上ひと言でも発したら、相談料として50万請求する」と。

それでも諦められない黛さんは、しばらくして再び古美門先生を訪ね、3000万を用意し、古美門先生の前にドサドサと札束をばらまき、古美門先生の度肝を抜きます。古美門先生は始めこそ「出所の不審な金は受け取れなーい」と拒否しますが、黛さんは「父の実家の畑を担保に」とのことで、古美門先生は「凄まじいバカだねぇ」と呆れますが、結局これが、古美門先生の弁護士実務復帰になります。

黛さんは裁判の資料、控訴趣意書、過去の判例等を古美門先生に目を通すよう渡しますが、古美門先生は「ゴミだ、目が腐る、さっさとそのポリ袋に戻せ」と放り投げ、黛さんには「坪倉の美談を集めろ、親孝行でも、食べ物を残さないでも何でもいい」と指示。

マスコミを焚きつけるようにも命じます。裁判所はマスコミに弱いからと。

そして古美門先生は、調査員として、蘭丸くんという役者志望の男の子を雇っており(曰く、草の者)調査は彼に頼んでおり、謝礼として、服部さんの美味しい手料理と、古美門先生から手渡されるお小遣いで雇われています。

坪倉くんは、勤め先のガソリンスタンドの店長を殺したという罪に問われていましたが、事件当時、公園で、コーヒーを一杯片手に、一日中、植物を眺めていたと証言しており(坪倉くんは植物に関する学芸員になるのが夢)売店でコーヒーを買ったと言っていますが、レシートもないので、確たる証拠もない状況でしたが、古美門先生は、売店の店長に、貴方の証言で、罪もない青年が一人救われるかも知れない、冤罪に遭っている若者を救う姿は、別れた元妻と娘の心を揺さぶれるだろう、裁判で証言するようにと、売店の店長を陥落します。

坪倉くんは、警察の取調室でも、椅子を蹴られたり、または恫喝されたりと大変に酷い取り調べに遭っていたとの証言もあり、やがて裁判のやり直しが決まります。

相手の検事は、若手のエース杉浦検事だからと黛さんは気合いを入れますが、古美門先生は「笑わせるなあんな影の薄いやつ」と一笑に伏し「自動ドアが開かないこともよくあった、私が最もカモにしていた検事だった」と。

古美門先生は証拠をがっちり集めて裁判に臨みますが、新しい証人が現れ、その女の子は美大生で、やはり事件当日、売店でコーヒーを買い、一日中草花のスケッチをしていたと証言、そのことはその日付のブログにも書いてあり、形勢は一気に悪くなります。

黛さんは、女の子のブログを隅から隅まで読み、古美門先生自身も、警察の言い分に矛盾があることを発見、次の裁判に臨みます。

黛さんは、女の子のブログを読み、ブログには、近所の幼稚園で運動会があり、園児が可愛かった、ラーメンを夜中に食べにいった等、その他毎日、面白い記事を書いてあるが、調べたところ、ラーメン屋は定休日が木曜日であり、ラーメンを食べにいった当日は違う曜日、幼稚園の運動会があった日もやはり違う曜日、日付に関しては、女の子のブログは信ぴょう性に欠けるものであると。ラーメン屋に確認をとったところ、そのブログの更新日は確かに定休日だったとのことで。

女の子は、面白い話題はブログにすぐ書かずストックしておき、何もなかったような日に書きだし、ネタが常に切れないようにしておいたのではないかと黛さんが訊ね、最終的に女の子は、覚えていない、そう言い出します。

古美門先生も、警察は坪倉くんに対して恫喝、椅子を蹴ったりとひどいことをしていたという証言に対して、警察はそんなことはしていない、部下たちもそんな現場は見ていないとこぞって証言していましたが、警察署の隣のビルは当時、朝から晩まで解体工事をしており、やかましくて仕方がなかったはず、そしてその年は省エネの年で、警察署も冷房を入れず、窓を開けっぱなしにしており、解体工事の音が聞こえなかったはずはない、坪倉くんの尋問をしていた時も、ドアを開けっぱなしにしていたはずだと、担当刑事にそう詰め寄ります。

刑事はあくまで空とぼけますが、古美門先生は「根拠を示してください」と詰め寄りますが刑事は「目ぇ見りゃわかるんだよ!」と激昂します。やはりそれは確たる証拠とはいえず、結果、坪倉くんは無罪になります。

無罪となった坪倉くんは自由の身になりましたが、自分を尋問していた刑事の姿を見て「次はお前をぶっ殺してやる」とつぶやき、それを聞いた黛さんは、自分が殺人犯を野に放ってしまったのではないかと当惑します。

それを見抜いていた古美門先生は「怖くなったか?」と訊ねます。黛さんは「坪倉くんがやっていたと思いますか?」と訊ねますが、古美門先生は「どっちでもいい。やっていようがいまいが、なんの関係もないし興味もない。坪倉は証拠不十分だったから無罪になっただけだ。三木のもとへ帰りなさい」と。

黛さんは「だとしたら、真実は?」と訊ねますが、古美門先生は「自惚れるな、我々はただの弁護士だ、神ではない。真実がなにかなんてわかるはずもない」と。
古美門先生は、ご自身の立場をちゃんをわかっているのです。古美門先生こそとても謙虚であると言え、プロ意識もあり、逆に弁護士である自分は神かなにかと自覚のないうちに勘違いしている黛さんのような弁護士の方が多いのではないでしょうか。

そののち、黛さんは三木事務所を辞め、古美門事務所に入ります。以後、古美門先生とタッグを組み、色んな事件に取り組みます。

著作権侵害、離婚裁判、政治家の不正事件、相続、親権の停止・喪失、公害訴訟と、黛さんのおかげで、古美門先生が嫌がってきた案件をこなすようになります。

親権の停止・喪失は、依頼主は子役の安永メイちゃん(12歳)で、母親の親権を取り上げるよう依頼してきます。民法改正があり、子供自身が請求権者となって、親権の停止・喪失を申し立てることが可能なのです。

これはあくまで特殊な例で、虐待等の行為が明らかでなければならず、おそらく現在もそんな例はないでしょう。(私も判例を見たわけじゃないので断言できませんが)結局、訴訟を起こすのも、弁護士を雇うのもお金がかかりますし、ましてや親の虐待に遭ったりして傷ついた子供ならなおさら無理でしょう。

ですがメイちゃんは超売れっ子子役ですし、お金はいくらでもありますから、古美門先生を雇いたいと、身を隠しているホテルへ古美門先生たちを呼びつけ、古美門先生も「古今東西、あらゆる子役の悲劇を一身に背負いこんだようじゃないか、ませたクソガキでもあり哀れな操り人形でもあったわけだ、メイくんいささか難しい仕事になりそうなんだが?」と。

メイちゃんもいともあっさりと「2000万でどう?CM一本ぶん」と契約はまとまり、裁判所にお母さんの親権停止を申し立てようと言い出します。

メイちゃんは天才子役として脚光を浴びてきた子ではありますが、母親ときわめて仲が悪く、九九さえあやふやで、そのくせ出演料と源泉徴収の計算はできるという、屈折した子供でもあります。古美門先生のこの時の相手は、実の父親である古美門清蔵さん、やはり古美門先生も父親と仲が悪いです。黛さんに「サンタクロースをいくつまで信じていた?」と訊ね、黛さんは「私は今も信じています」と。
服部さんにも訊ねますが「私の少年時代は、サンタクロースというシステムがございませんでした」と。メイちゃんは「私はサンタなんて一度も信じたことない」と。古美門先生は「必ず勝とう」と。

最終話は、古美門先生と黛さんの対決になるわけですが、黛さんは詰めが甘いと言いますか、ひたすら情に訴えてくるだけで、古美門先生のように、証拠でがっちり固め、依頼人の人格や事情など関係なく仕事に徹するというわけではないので、勝ち目はありません。

古美門先生は「そちらの弁護士先生(黛さん)が主張なさったことは、なんの論理的根拠もなく、ひたすら情に訴えるのみの、女子中学生が同人誌に投稿して落選するライトノベル以下の作品であり、しかも自分に酔って涙する始末。裁判は夢を探す場所?そんなものが見つけたいならインドのガンジス川か下北沢の三流劇団に入りたまえ!」と身も蓋もないことをまくし立てます(笑)

古美門先生は加えて「我々は神ではありません。この私も含め、愚かで、感情的で、間違えてばかりのちっぽけな生き物です。そんな人間に人間を裁くことは出来るのでしょうか?いいえ出来ません。だから人間に成り代わり、法が裁くのです。どんなに怪しかろうと、どんなに憎かろうと、一切の感情を排除し、法と証拠によって人を裁く、それこそが、我々人類が長い歴史の中で手に入れた、法治国家という大切な大切な財産なのです。無論、公明正大なる裁判所におかれましては、情緒的な弁論に惑わされることなど微塵もなく、徹頭徹尾、法と証拠によってのみ判断なさることでしょう、そしてその場合、結論は明白であります、以上」

黛さんはだんだんと顔色が悪くなり、二の句が継げなくなり、何も言えなくなってしまい撃沈、黛さんはやはり、古美門先生に負けてしまいます(笑)

古美門先生は「勝ったと思ったか愚か者ー!百億万年早いわー!!」と大笑い。

黛さんの依頼人はこの時、公害訴訟で協力してくれた、仙羽化学の元社員で科学研究者である八木沼加奈さんで、タイの企業から誘われているからそこへ行くとのこと。古美門先生は「貴女ならどこへ行っても成功することでしょう、万が一、再度不当解雇に遭ったら、その時はこの私へご相談ください、少々高いですが」と(笑)

古美門先生は黛さんに「自分が成長したと思ったか?ぜーんぜん成長してないぜーんぜん!私を追い詰めたと思ったか?遊んでいてやっただけだ、一度次期惑星探査機はやぶさⅡに括りつけられて数年間小惑星を探査してくるといい少しはマシなるだろう、成層圏で燃え尽きなければねー!」と黛さんをあざ笑います(笑)

古美門先生は黛さんの「私、何がいけなかったんでしょうか?」の問いに「旅人のコートを脱がせたくらいで勝てると思うな、太陽やるなら灼熱地獄でパンツ一枚残らずはぎ取れ、そのくらいでなければ理想で現実を変えることなど出来やしない、もっともっと強く賢くなれ朝ドラ!」これは至極ご尤もで、黛さんは私の目から見ても甘いです。裁判所はそもそも、情に訴えたところで無駄なところです。

また、自分自身が強く賢くなければ、依頼人の利益など守るなんて出来ませんからね。

古美門先生ほど強くてタフな人もいませんし、また黛さんは黛さんで、古美門先生にはない、有り余る誠実さ、堅実さを持っています。なんだかんだ言って、二人はいいコンビです。

結局、黛さんは公害訴訟のあとすぐに、古美門事務所を辞めますが、古美門事務所に舞い戻り、再びタッグを組むことになります。

ラストは裁判所へ向かうところで「ガニ股を直せと言ったろう!」「私はガニ股じゃありません」「ガニ股だ」「どこがガニ股なんですか!」「精神的なガニ股なんだよ!」「なんですかそれは、先生に精神面を言われたくありませんね!」「人を指すな失礼だろう!!」と指を指しあいながら終わります。

一応、このドラマは、一話完結型のオムニバス形式ですが、9、10話は公害訴訟の話で、特に9話は、堺さんの長台詞が有名になり、当時、ちょっとした話題になったと聞いています。

そのシーンを見たがるファンはきっと今もいるはずで、安住紳一郎アナは他局のアナウンサーなのに「リーガル・ハイ」の大ファンで、特にこの9話の長台詞を堺さんと読み合う企画が他局の番組でもあったほどです(笑)

ちなみに堺雅人さんは、NGを出すことがあまりないらしく、台詞も覚えろと言われたらきっちり覚えてくる方だそうです。代わりに、数字が苦手で、コンビニでバイトしていたとき、いつも釣り銭が合わず苦労していたようです。
堺さん曰く「台本は読めば、情景が頭に浮かぶが、数字には何も浮かばない」とのこと。まあ確かに、台本はあらすじが書いてあるので情景は浮かぶでしょうが、数字は無機質なものですからね…(笑)

ガッキーとの息もぴったりですし、間も絶妙でした。堺さんはこのドラマで、とりわけ早口でしゃべることを意識していたそうです。早送りされたりするのが嫌だからとかで。

9、10話も明言・金言がたくさん飛びだしました。「戦に勝つには、とびっきり強力な武器を持たにゃ」と言われ「いい武器は高いですよ~」その他、古美門先生の金言はたくさんありますが、とにかく、ご覧になったことのない方は、もしかしたらFODで配信してるかも知れませんし、DVDは廃版になりましたが、またいつか出るかも知れませんので、是非是非見てみてくださいませ!

堺雅人さんは天才としか言いようのない役者さんで、今も大好きな役者さんです。

ちなみに、事務員の服部さん(里見浩太朗さん)は、ご自身はいつも「なんの取り柄もないただの事務員でございます」と笑い、素性も不明ですが、スイスのホテルの料理長、フォークソングをやっていたので楽譜も書け、体術にも長け、計算も早く、エステも施術でき、なんでも出来ます(笑)昔、古美門清蔵先生に助けられたことがあるとかで、何をしたのでしょうね(笑)

愛も、法も、嘘がすき。







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