雑記：何てことのない日の夜に。

お風呂から出て、ドライヤーをかけていると、夫が何か話しかけてきた。ドライヤーを止めて「何？」と聞き返す。
「今日、ヤギがいたよ」
「ヤギ？」
今日夫は自宅から鎌倉までランニングをしていたから、その途中でヤギを見かけたらしい。そういえば、さっき私は夫が買ってきてくれた鳩サブレを食べたな、と思い出す。鎌倉のお土産。昨日だったか今日だったか、ちょっと曖昧。

夫がランニングしていた今日、私は何をしていたかな、と思って、まっさきに頭に浮かんだのは、キッチンに倒れていた男だった。仰向けに倒れた男は、胸を血に染めて、すでに事切れていた。あの男をどうしよう。

コンビニまで散歩がてら買い物に行って、おじいちゃんとお父さんと孫、といった感じの三人が「どんぐりころころ」をわりと大きな声で歌いながら歩いているところに出会った。そうしたら、私の母と私の娘が手を繋いで歩きだして、大きな声で歌い出す。それは、トトロの「散歩」。あるこーあるこー。私はげんきー。私は少し後ろから二人を眺める。楽しそうだな。私に子供はいないのだけれどね。

家に帰ったらキッチンで死んでいる男をどうしよう。私が救急車を呼ぼうとしたら同僚に止められた。何か隠し事があるようだ。怪しい。

鳩サブレを食べながらパソコンを打っていると夫が、「りんは本当に文章を書くのが好きだね」って。
「ほんとにねぇ」
言いながら、思わず笑ってしまう。

そんなこんなで、テレビを見ながら夫と夕飯を食べている。食後には、コンビニで買った豆大福を食べよう。

何てことのない日の夜。

空想と現実のはざまに生きる私の、何てことのない日の夜。