日記：人間観察

つい先日、一人でショッピングモールに行ってお買い物をして、フードコートに寄りました。私は、何度か書いていると思うんだけど、数年間家に引きこもっていた時期があったから、外に出るのはリハビリみたいな感じです。平日の昼間とはいえ、ショッピングモールのフードコートはそれなりににぎわっています。そういう、ザワザワしたところで食事をする練習ということです。

いつもの私は、ぼさーっとしていて、注意が散漫です。うわのそら。でも、最近「そういえば、作家さんには人間観察が好きという人が多い気がする」ということに気付きまして。私もやってみようと思いました。

でも、人間観察って何だろう。
人間を観察すること。観察……
じろじろ見つめては失礼にあたります。私は、ハンバーガーをかじりながら、何気なく周囲を見ます。

右隣は、小さい子を連れた家族。平日の昼間に家族そろってショッピングモールに来られるってことは、両親は何のお仕事だろう。服装はカジュアルだけれど、きれいめ。旦那さんがちょっと意識高い系に見える。もしかしたら、起業したベンチャーの社長さんだろうか。いや、それならこんな時間にのんびりランチできないか……

ちょっと離れたところに座ったのは、リクルートスーツみたいな感じの若い女性。就活……の時期じゃないか。新社会人……でもないか。もしかしたら、内定している会社の新人説明会の帰りか？　会社というものに所属したことがないから、何をしている人なのかまったく想像がつかない。長い髪に艶があって若々しい。

すぐ前の席に、ベビーカーで赤ちゃんを連れた女性が来る。赤ちゃんは眠っている。女性は少し赤ちゃんの様子を見てから……え、まさか。なんとそのまま席に赤ちゃんだけ残してファストフードのお店の列に並びにいった！　いや、そこからじゃ赤ちゃん見えないでしょ、大丈夫？　私が人さらいだったら今すぐ赤ちゃん連れてどこか行くよ？　ここは、ママが戻ってくるまで不審者が来ないように私がちゃんと見張っておこう。

赤ちゃんの隣の席で、若い男性が一人でずっとスマホをいじっている。もしかしたら、人さらいの犯人かもしれない。仲間連れの複数犯で、この人は実行役。近くにいる仲間に連絡をとっていて、いざとなったらママの列で何かもめごとを起こしてママの気をそらせるのかもしれない。そのすきに、この人がそしらぬ顔ですーっとベビーカーごとさらってしまえば、赤ちゃんは熟睡しているし、誰にも気付かれないかもしれない。

あ、あんなところに防犯カメラが。あの人は、だからあの席に座ってカメラに背を向けているのか。

あ、犯人の席に年配の男性が。そうか、あの人は人さらいじゃなくて、父子おやこでフードコートにランチにきたごく普通の一般の人だったか。良かった良かった。でも、正面に座らないのね。一緒にフードコートに来るくらいだから仲良しかと思いきや、もしかしたら会うのは久しぶりなのだろうか。心なしか、よそよそしくも見える。ああ、そうか。母親の遺品整理で七～八年ぶりの再会か。それなら、多少のよそよそしさと、男二人だからフードコートで簡単に飯をすませよう、という気持ちもわかる。お母さんはお料理が得意な人だったのでしょうかね……

ベビーカーの赤ちゃんのママが戻ってきた。私は席を立つ。

スマートフォンを取り出す。
「ママが予定より早く戻ってきちゃったから、あの子は連れ去れなかった。監視カメラもあったし、次のターゲットを待ちます」
仲間に送信して、マックのゴミを捨てる。

私は、たくさんの人が思い思いに食事を楽しむ空間を、あとにした。

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どこまでが本当で、どこからが妄想でしょうか？笑。
人間観察って、どうやるのかわからず、今ちょっと調べたら、ただぼーっと眺めるだけのこともあれば、身近な人を観察してその人との交流に役立てることもあるそうです。私がしていたのは、観察じゃなくて妄想ですね……

いつもぼさーっとしているので、今後もたまにはやってみようと思いました。